ISPSハンダ・ゴールドシニアオープン 中尾が逆転V
一般社団法人 国際スポーツ振興協会(ISPS)が主催する「ISPSハンダ・ゴールドシニアオープン」(賞金総額3000万円)が、11月23、24日に埼玉県鳩山町の鳩山カントリークラブで開催された。2007年から開催してきたPGA(日本ゴルフ協会)シニアツアー「ISPSハンダカップ フィランスロピーシニアトーナメント」の「スーパーシニア」の部を発展させた大会で、中尾豊健(68)が通算3アンダーのスコアで優勝した。また、表彰式でISPS半田晴久会長(68)は、来年以降はゴールドシニアとジュニアを融合し、より社会的意義のある大会とする意向を明かした。
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ISPS・半田会長から優勝の証しである羽織と兜(かぶと)を贈られた中尾豊健は、両手を高々に上げ喜びを爆発させた。「最高です」。満面の笑みだった。
初日は雨天の中で1アンダー2位タイ。迎えた最終日。首位の青木民也を追いかけ、トータル3アンダーで先にフィニッシュ。その後、青木が最終ホールをボギー。逆転での勝利となった。
レギュラーでは1981年「ゴルフダイジェストトーナメント」で中島常幸をプレーオフで破って優勝した実力者。シニアでも04、07年と2度の優勝実績を持つ。今年7月に68歳になりゴールドシニアになり、いきなり優勝。12年ぶりの美酒となったが、59歳の時に左肩の筋肉を、64歳の時に右腕二頭筋を断裂する大けがを負う困難を乗り越えた勝利だけに、喜びはひとしおだ。
「優勝がいつ以来なのか覚えていないよ(笑)。ゴールドシニアでは新人。周囲は怖い先輩ばかりで緊張したよ。それが良かったのかな。2日間アンダーパーで回れました。久々にいいゴルフができた」。久々に味わう喜びをかみしめた。
往年の名プレーヤーが、若いころと同じような輝くプレーが随所にみられた大会。これも半田会長の社会的意義を考えた大改革が生んだもの。
「プロでもアマでもゴルフは何歳になっても同じように楽しめることを伝えたい」と、今年から「ISPSハンダ・ゴールドシニアオープン」を新設。賞金も同時開催の「ISPS・ハンダカップ・フィランスロピーシニアトーナメント」の総額2000万円(優勝者は360万円)を上回る3000万円(優勝者は600万円)を用意した。
ゴールドシニアのプロにとっては数少ない真剣勝負の試合新設。大御所・海老原清治(70)は「こういう大会があれば若返る。出場への準備をするし、体が若返る。賞金も張り合いがある。若さを保つ秘訣(ひけつ)だよ」と感謝した。優勝した中尾も「僕らにとってはありがたい。こういう真剣に対戦できる機会が少ない。仲間もゴルフしなくなっているから」と話し、他の多くのプロも一様に感謝の言葉を口にした。
その声。大会でのプレー。雰囲気。自ら大会に参加した半田会長は、身をもって感じ、そして固く決意した。
「続けていかねばならない」。
半田会長は常々「ISPSは一般社団法人。社会のために何をするかを考える。より必要とするところを応援していく」というスタンスを語る。その社会性の意義から昨年限りで男子レギュラーツアー開催を休止。代わりに今年、この大会を新設した。
だが、来年はさらにその社会的意義を追求していく。「高齢化社会になってゴルフ人口が減っている。少子化に加え、団塊世代も定年退職を機にゴルフをやめる人が多い」と、ゴルフ界の未来に危機を感じている。「ゴルフ界の支えになるためにも、ジュニアを育て、女性をたくさん取り込んで女性ゴルファーを増やす。団塊世代にもゴルフを続けてもらうようにする」をテーマに、新たなウルトラC級の秘策を繰り出した。
それは「ゴールドシニアとジュニアの融合」。
来年はシニアの大会を休止。ゴールドシニアの大会はそのまま「ISPSハンダ・ゴールドシニアオープン」として継続開催。そこにジュニアの中高生を一緒に出場させる。具体的には「日本PGAゴールドシニア選手権」大会の予選に当たる東西予選会の上位者、さらにこの予選を通過できなかった人向けに、マンデートーナメントの位置づけで「熱血枠」の大会を開催し上位10人。そこに、中高生のジュニアを30~40人を組み込んで一緒にラウンドするというもの。
レギュラー、シニアを勝ってきた名選手が、68歳を超えても素晴らしいゴルフをすることなどで、ジュニアに技術や経験などを伝えていくゴルファーとしての意義がある。それに加え、社会性でも「高齢化社会もプロが先頭に立ってゴルフの素晴らしさを訴え、何歳になっても一緒に楽しもう!と。そんなメッセージを訴えることで、おじいさんが子供や孫、親戚などと一緒にゴルフに行くきっかけになればいい」と説く。ちなみに出場するプロへの賞金は総額1000万円、優勝賞金200万円とし、最下位でも3~4万円を用意。大会参加への金銭負担を軽減。高齢者にやさしい大会とする意向だ。
「新しいクリエーティブな創造性が、新たな文化を生み出す。最初は1人でも、それが大きな輪となりそれが社会貢献となる」と半田会長。スポーツの持つ力を、また新しい形で表現していく。