元ヒスブル、新ユニット結成の真意とは

『春~spring~』『なぜ…』の大ヒット曲で知られる紅白出場バンド、Hysteric Blue。その元メンバーであるTama(vo)と楠瀬タクヤ(ds)による音楽ユニット、Sab?o(シャボン)が8月3日に新曲『=:Repeat:=(リピート)』をリリースした。これまで、自由かつ柔軟なコラボレーションで、配信限定ながらすでに18枚のシングルを発表。地元・大阪に帰ってきた2人に、ユニット結成の経緯、現在の活動について話を訊いた。

「ファンの人たちを置き去りにしてしまった」(タクヤ)

──Hysteric Blueとしてデビューしたのが1998年。2ndシングル『春~spring~』が爆発的に売れて、1999年にはNHK紅白歌合戦にも出場し、華々しいキャリアを築いてきたわけですが、メンバーの不祥事により2004年にバンドは解散します。その後の活動について、大きく報じられていなかったのですが、まずはこのSab?o結成についてお聞きできれば。

タクヤ「そうですね。Sab?oの1曲目となる『BIG VENUS』をリリースしたのは2013年なんですけど、制作したのは2011年頃で。バンドが解散してからその頃まで、ずっと会ってなくて、お互いそれぞれ別の音楽活動はしてたんです。で、2011年頃は、Tamaちゃんのバンドに僕がサポートで入ったりするようになって。そのとき、(Hysteric Blueのプロデューサーだった)佐久間さんが、2人で仕事してみないかって振ってくれて、ひとつのプロジェクトの作詞を僕とTamaちゃんで手がけたり、一緒にやることがちょいちょい増えだして」

Tama「そう、疎遠になってたところから、そうやって接点が出てきて。そんなとき、パチンコメーカーの豊丸産業さんからタイアップのお話をいただきまして。最初、『春~spring~』と『なぜ…』を使用したいと。じゃあ、録り直しましょうと。でも、せっかく録るんやったら、新曲も作ろうって。そのときに『BIG VENUS』を作ったんです。そこから、ユニット名をつけて、活動し始めたという感じです」

──資料には、2人以外のメンバーを定めず、音楽業界以外とも柔軟にコラボレーションできるようなシャボン玉のような「ふんわりした」ユニット形式を目指している、と。シャボン玉、つまり、Sab?o(シャボン)という。

タクヤ「そうです。それぞれソロ活動しながら、この2人で活動するときは、Sab?oになるという。ふんわりという意味では、武道館を目指そうとか、オリコン10位以内に入ろうとか、そういうガツガツした目標もないので」

──活動休止中だったとはいえ、Hysteric Blueは2004年に突然の解散を余儀なくされます。その後の報告も出来ないまま。それはファンにとっても突然のできごとだったと思うんですね。ある一定の期間がおいて、そういった人たちのためにも実現したのが、このユニットなのかと思ったんですが。

タクヤ「するどいですねぇ」

Tama「結果的に、そうなってるかもしれないですね」

タクヤ「やっぱり突然過ぎたから、ファンの人たちを置き去りにしてしまったというか。僕たちも何もできなかったし、CDも廃盤になったし。配信ダウンロードが主流となった今でも、廃盤だからHysteric Blueのカタログ、楽曲はないんです。もし、僕ら2人でやることによって、ファンでいてくれた人たちにとって価値があるなら、僕が言うのはおこがましいですけど、いいのかなというのはありますね。もちろん僕らにとっても」

「私、歌うためにデビューしたのになって」(Tama)

──もともとHysteric Blueというのは、2人が組んだバンドが前身ですよね?

Tama「そう。初めて組んだバンド」

──それこそ、大阪城公園でストリートライブ(通称・城天)をやっていたという。Sab?oを組んだとき、その2人でやることの楽しさみたいなのを再確認したとか?

Tama「うん。高校1年で初めてバンドを組んだメンバーなんで。やっぱり細胞に刻まれているというか、テンポ感やタイム感みたいなのも自然と合ってくるんです。音を作るという点では、2人で一緒にやるのは自然なのかなって。それはなんとなく感じましたね。だから何年空いたとしても、その感覚が戻ってくるんですね」

──今回リリースされた新曲『=:Repeat:=(リピート)』から遡って聴いたんですが、Hysteric Blueらしさというか。それは2人の大きな魅力だと思うんですが、それは残したのか、それとも目指すところなのか。どちらの方が強いんでしょう?

タクヤ「う~ん。自分でも、その答えは出てないですけど、最初に聴いた印象というか、パッと聴きにヒスブルっぽい印象があるんだとすれば、2人でやって良かったなと思います。やっぱりヒスブルというのは、僕ら2人を認めてもらえたバンドでもあるので。ちょっと探求ではありますね。19曲くらいじゃ答えは出ないかも知れないですけど」

──Hysteric Blueって、ものすごい忙しかったじゃないですか。ひょっとしたら音楽を作っている時間より、宣伝してる時間の方が多かったり。

Tama「うん、ホンマにそうでした」

──デビューしたとき、まだ高校生でしたよね? いきなり売れたことで、スタッフも増えるし、プレッシャーも相当あったと思うんです。でも今は、活動形態にしても、2人である程度決められる。より楽しんで音楽活動ができているのかなと。そこが今日一番訊きたかったことで。

Tama「たしかに。縛られている感じはまったくないですね」

タクヤ「当時はやっぱりね・・・。辞めたくなったのは、それだもんね」

Tama「うん」

タクヤ「Tamaちゃんは音楽に対して真面目な子やから、『全然、音楽やってないやん!』って言いだして。まあ、仕事のほとんどが取材でしたし」

Tama「そうそう(笑)。宣伝とかの仕事の空いた時間に、レコーディングやるという。私、歌うためにデビューしたのになって、ずっとずっと思ってました」

──ありがたい状況なんだけど、という。

Tama「当時は、デビューしたい、バンドで食っていきたい、有名になりたいというのが、全然なかったんです。ただレコーディングしたくてデビューしたので、気持ちと現実がまったく付いていかない感じで。走れば走るほど、ストレスが溜まっていくみたいな。そのせいで、人を傷つけちゃうようなことはいっぱい言っちゃったのはあります。休みもない、外も出られない。街を歩くのが怖かった。もう、ストレスの発散どころがなくて」

「実家みたいな感じかな、『帰る場所』的な」(Tama)

──そのあたり、タクヤさんはどうですか? バンドのメンバーとして、同じようなストレスもあったかと思うんですが。

タクヤ「いや、僕はわりとミーハーなんで(笑)。だから、ヒスブルのときも、Tamaちゃんが感じていたプレッシャーを理解してあげられてなかった。レコーディングでも取材でも、わりと楽しんでいたんです。そんなに音楽してないやんっていうのも、自分にも原因があったし。それに、曲は書くけど、音楽を完成させるところまでの力はなかった。そんなんだから、2004年に解散しても何もできなかったんです」

──そんな挫折を経て、再び2人で活動を始めたわけですが、だからこそSab?oではどんなことをしようと?

Tama「私はソロ活動してるし、タクヤくんもサポートやったり、舞台の音楽制作やったり。どちらかといえば、それが軸になってるんですよね。だからSab?oに関しては、お話をいただいたり、お互いの気持ちが合ったときにやろうと。なんか、実家みたいな感じかな。そう、『帰る場所』的な。それが当時、ヒスブルを聴いてくれていた人の受け皿というか、『帰る場所』にもなったらいいのかなって。当時のヒスブルみたいにガツガツやっちゃうと、また病んじゃうかもしれないから、Sab?oではそういう活動はしません」

タクヤ「僕は、解散してアマチュアに戻り、そこから仲間を増やしながら、できなかった下積みをして。ちょうど2011年くらいに、いろんな現場を経験して、技術や知識もついてきて、音楽を仕事にすることをようやく理解してきたとき、Tamaちゃんというボーカリストと組んだら何ができるのか。Sab?oはそういうトライアルでもあるんです。音楽をやるというプレッシャーを感じながら、こういうことはできる、これは人の力を借りないといけないとか。逆にできないことで、音楽の幅も広がっていくという」

Tama「そっか、そっか。私はそれをソロでやっているから、逆にSab?oではノータッチなんですよね。だからプレッシャーを感じないのかもね。私はソロでは、タクヤくんがSab?oでやっているようなことをやるんですよね。自分で方向性を考えて、ミュージシャンのやスタジオの手配して。なんか2パターンを楽しんでいる感じです」

──なるほど。バンド解散を余儀なくされ、紆余曲折しながらも、今ではさまざまな経験を積んで、楽しく音楽活動されていると。それは楽曲からあふれるワクワク感からも分かります。だからこそ、不定期ながらもこのユニットでの活動は続けて欲しいなと思います。

タクヤ「僕らもそれが目標です。やめません!」

Tama「うん」

──やっぱり、この2人のカップリングがいいですよね。楽曲を聴いて改めて思いました。

タクヤ「そう言ってもらえるとうれしいです。それが伝わったなら、このプロジェクトは大成功です(笑)」

(Lmaga.jp)

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