私立恵比寿中学、デビューから5年目の変化「それがブレイクできない理由だって」
ももいろクローバーZの妹分的存在として、2009年に結成されたアイドルグループ・私立恵比寿中学(通称・エビ中)。「永遠に中学生」というコンセプトを掲げ、2012年メジャーデビュー。昨年の11月には、デビュー曲『仮契約のシンデレラ』以降の多彩な作品から厳選されたベストアルバム『中卒』『中辛』が2枚同時にリリースされた。メジャーデビューから5年目を迎え、「アイドル戦国時代」というこの激動のシーンにおいて、グループとして、個人として、アイドル・私立恵比寿中学とどう向き合い、どう変わったのか。最もエビ中歴が長い、メンバーの真山りか(20/写真左)と安本彩花(18)に話を聞いた。
「初期は『サブドル』というスタンスで、ティッシュを投げたり、白塗りをしたり・・・」(真山)
──『中卒』と『中辛』、聴かせていただきました。全曲現メンバー編成で収録、なかでも『仮契約のシンデレラ』は完全新録でしたが、全然違いますね。より活気があるというか、完全に自分たちのモノにした感じがありました。全員が同じ気持ちで歌っているなっていうのが伝わるというか。
真山「うれしいです! 『仮契約~』はライブで歌いすぎて、逆にどう歌ったら良いのかわからないところもあって(笑)。ライブのノリで歌っちゃってるからすごい元気なのかも」
──5年経って、安本さんの最後のセリフ「お疲れちゃ~ん!」も別人のようですよね(笑)。
安本「当時は大人に言われたことをそのままやってた感じがあったんですけど、ライブでやっていくうちに染みついたというか。分かってきました、セリフのニュアンスを(笑)」
──このベスト盤でエビ中の5年間を振り返ったと思うんですが、ほとんど初期メンバーというお2人(真山が2009年8月からの初期メンバー、安本が2カ月後の10月に加入)だからこそ感じてきたこともあるのかなと。すごい数のアイドルがいるなかで、どういうスタンスで活動していこうと意識していましたか?
真山「その都度コンセプトは変わってるんですけど、初期は『サブドル』というスタンスで、ティッシュを投げたり、キャッツメイクをしたり、白塗りをしたり・・・とにかく装飾を施せばいいと思ってる時代もありました。大人が私たちを使って面白いことをしようみたいな、そんな感じ(笑)」
安本「なんか楽しんでたよね、大人が(笑)」
真山「エビ中のスタッフさんはすごい真面目で、週に1回は必ず会議するくらい真面目な方々ばっかりなんですけど、真面目すぎるがゆえにちょっとおもしろい発想をすることが多くて(笑)。やらされていたわけではないんですけど、当時は自分たちで意思を持ってなかった部分はあって。でも最近は自分たちからこうしたいああしたいって言えるようになってきたんですよ」
──結成当時は真山さんは中1、安本さんは小5ですか。スタッフさんに意見を言えるようになったのはかなりの変化ですよね。なにかきっかけとかあったんですか?
真山「きっかけとかはなかったんですけど、大人になるにつれて、それぞれ自分の進路だったり、やりたいことが芽生えてきたというか。で、なんか今まではこう大人に対して思っていても言えない部分とかあったんですけど、言ってもいいのかなって思えるようになって。それで話せるようになった感じですね」
安本「スタッフさんだけじゃなくて、メンバーと真面目な話をする機会ってあまりなかったんですけど、ここ1、2年くらいでみんなで会議する日が増えたりして。まだ慣れないからおどおどしながらだけど、みんなでこう思ってるって意見を言い合うようになって、それを校長先生(マネージャー)とか大人の方が聞いてくれて」
──メンバー同士でちゃんと話をするのは、すごく良いことですよね。8人の想いを共有してこそできることや見えることがたくさんあると思います。
真山「良いことです、ほんとに! やっと言えるようになったというか」
安本「それが(エビ中が)ブレイクできない1つの理由だと大人の人に言われてて。もっと言い合えって、喧嘩しろって言われてたけど、できなかった」
真山「ずっとね、昔から私を含めてメンバーみんな草食系というか、現代っ子あるあるなのか、自分の思ってることはあんまり口に出さないで、うまくうまく円滑に進むようにって感じだったんです。でもほかのグループさんはすごく意見を言い合ってて、私たちもそうなれたら良いなぁってずっと思ってたんですよ」
──ちゃんと思いを共有できるようになって、前よりもメンバー間の絆というか距離感も近くなったんじゃないですか?
真山「そうですね。メンバー同士がクラスメイトみたいな状態だったのが、ようやく家族くらいに近づけたかなって感じがしますね」
「見たことのないところにみなさんを連れて行きたいし、これからは引っ張っていきたい」(真山)
──お2人ともアイドルとして7、8年活動してきて、エビ中としてではなく、アイドルとしての自分を俯瞰的に見たらどう思いますか?
真山「まだまだだなって思います。私立恵比寿中学として全国区の歌番組とか出させていただいたときに、知名度もまだまだだし、自分自身も自信を持って前に出て行けてないなって思うので。私が昔モーニング娘。さんが好きだったように、今テレビで見てるお子さんにこんな風になりたいって思ってもらえるような存在になれるように、もっともっと極めていかないとって思いますね」
安本「まだ自分のなかでアイドルってなんなのかよくわかってなくて。いろんなアイドルがいるし、自由で枠がないと思うから、どこにはまるのかわからなくて難しくもあるし。逆になんでもありで個性出して良いっていうのは自分にとってはすごく居やすい環境だなって思うけど、まだわからないですね。ずっと永遠に模索してると思います」
──それで、これまでにはメンバー全員での舞台や、モデル、アーティストとのコラボなどソロ活動・・・と、それぞれいろんなことをして自分の強みとかやりたいことを探しながら、自分のアイドル像を模索しているんですね。
真山「今は好きなことをやらせていただいているので、どんどん極めていって、それをエビ中に還元できたらって思いますし、それでもっとグループが前にいけたらいいな。私たち、『中学生として歴史に名を刻む』っていうのを今年の目標にしてて。これまでずっと『中学生』としてやってきて、改めて中学生ってなんだろう、もう一度考えてみようって。アイドルとしての中学生というものを日本はもちろん、世界の人々にも浸透させたいんです」
──実際に全員中学校を卒業して、壮大なテーマに(笑)。
真山「中学生ってまだまだ子どものイメージがあると思うんですよ。ライブ行くにも『お前中学生のグループなんて見に行ってんのかよ』って感じにみなさん言われるのかなって。そこが手を出しにくい一因でもあるのかなと思うので、その概念を覆していこうっていう。そうしたらもっとみんなが幸せになれるのかなって思うんです」
──真山さんも、初の20代中学生になりましたもんね。
真山「そうなんです。20歳になる前はすっごく嫌だなって思ってて、ハタチになってまで中学生かよって。でもその目標ができてからは『あっ、中学生って良いかも』って思えるようになって。歴史上の人物でもほかにいないですよね、ハタチの中学生(笑)。すごいレアな経験じゃん、いろいろ可能性あるじゃんって」
──なるほど。アルバムに収録されている新曲の『サドンデス』(作詞作曲:岡崎体育)の歌詞で『連れてってもらうんじゃなくて きっと連れて行くからさ』ってところがすごい印象的なんですけど、そのお話を聞いたら、エビ中さんがファンに見たことのない景色を見せてくれるんだろうなって思いました。
真山「私もそこすごく好きです~!」
──その部分のみなさんの歌声が、すっごく心強くて。
安本「おおー、そう感じていただけてうれしい! 確かに、今までファンのみなさんに引っ張ってもらってるっていう意識があって。デビューした頃は先輩のももクロさんのライブに出させていただいたり、もうお客さんがいるところから始まってたから、自分たちがお客さんを引っ張るっていうよりは、もうすでにいてくれてるところに馴染むのに必死だったというか。でもこの歌詞をもらったときに、エビ中がファンを引っ張ってってくれっていう岡崎さんからのメッセージだと思って、そう言ってくれるくらい大きくなれたかなってうれしかったんです」
真山「岡崎さんからのメッセージでもあるし、それが私たちの気持ちにもシンクロしたのかなって思いますね。見たことのないところに、みなさんを連れて行きたいし、これからは引っ張っていきたいです!」
──そして春ツアーが4月から始まりますね。関西では「大阪国際会議場 メインホール」で4月29日・30日の2日間開催です(チケットは3月18日10:00~発売)。
真山「昨年の春ツアーの大阪公演は、私たちのデビュー日(5月5日)にさせていただいたんですけど、それが結構私たちのなかで私立恵比寿中学を見つめ直した日ですごく思い入れがあって。今回2日間やらせていただくということで、改めて感謝の気持ちを伝えられればいいなと思ってます。2日間来ていただいても楽しめるように、MC担当にがんばってもらいますし。(安本を見ながら)ねっ!」
安本「ええー!(笑)・・・2日間あるので、その間で大阪のおいしいものを食べて、その話もできたらいいな、と思います!」
※この取材は2月3日(金)に行われました。松野莉奈さんのご冥福を心よりお祈り申し上げます。
(Lmaga.jp)