南米・ペルーから一人旅のパディントン、京都で展覧会
マイケル・ボンド(1926~2017)原作の児童小説『くまのパディントン』。40以上の言語で出版され、約3500万部のベストセラーとなっているその世界を紹介する展覧会「くまのパディントン™展」が、2月8日から「美術館「えき」KYOTO」(京都市下京区)で始まります。
物語の主人公パディントンは、南米ペルーからイギリスまでたった1匹で旅してきたくまです。彼はロンドンのパディントン駅でブラウン夫妻と出会い、家族として迎えられました。そしてドタバタ劇を繰り広げながら、最後はめでたくハッピーエンド。そんな同シリーズは1958年に第1作が出版され、メインシリーズ15作をはじめ、シリーズ外の短編集、絵本などが出版されています。
本展は全5章で構成。まず、ぺギー・フォートナムの挿絵原画と複製画で登場人物や物語を紹介する第1章、続いて、ボンド氏が語るパディントン誕生秘話や、彼の仕事道具、手紙類などを展示する第2章、そして、フレッド・バンベリー、デイビッド・マッキー、ジョン・ロバン、R.W.アリーが手掛けた絵本原画と、世界中で出版された書籍などを紹介する第3章、アイバー・ウッドが手掛けた4コマ漫画の原画と、アニメ映像、世界各国で制作されたぬいぐるみや雑貨を紹介する第4章と続き、最後は昨年6月に逝去した原作者ボンド氏のインタビュー映像で幕を閉じます。
パディントンの愛くるしい姿や英国の生活文化に魅せられるファンは多いでしょう。が、本作の背景にはもうひとつのエピソードが潜んでいます。物語冒頭のパディントンの格好(首に札をつけ、スーツケースの上に座っていた)は、第2次大戦中にロンドンから疎開する児童たちの姿が元になっているのです。こうした背景を知って物語を読めば、ぐっと深みが増すはずです。
また、展覧会初日の2月8日10時から約20分間、展覧会の開催を祝ってパディントンが美術館入口にやってきます。お見逃しなく。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)