江戸琳派の美学を、京都の細見美術館で満喫
2018年に開館20周年を迎える「細見美術館」(京都市左京区)。3月3日から始まる『細見コレクションの江戸絵画 抱一の花・其一の鳥』展では、同館の目玉である江戸琳派にフォーカスします。
江戸琳派とは、19世紀前期に江戸で花開いた絵画様式で、代表的作家は、酒井抱一(1761~1828)と鈴木其一(1796~1858)です。桃山時代から江戸時代初期に京都で育まれた琳派を受け継ぎ、江戸風にアレンジしたことで、大名から庶民まで幅広い人気を博しました。
興味深いのは、こうした琳派の系譜が「私淑」(尊敬する人と直接の師弟関係はないが、その人を慕い、模範として学ぶこと)で受け継がれたことです。桃山時代から江戸時代初期に活躍した本阿弥光悦と俵屋宗達に私淑した尾形光琳が琳派を確立し、その尾形光琳に私淑した酒井抱一が江戸で新たな琳派を創造した。江戸琳派を理解するには、この流れを押さえておくことが肝要です。
本展では抱一と其一はもちろん、ほかの絵師の作品も含めて江戸琳派の世界を堪能できます。ちなみに酒井抱一は姫路藩主・酒井家の次男として生まれました。彼の作品には、その血筋と若い頃から様々な芸文に親しんだ教養・雅趣が溢れています。一方、抱一の後継者である其一の画風は、抱一よりさらにグラフィカル。2人の微妙な作風の違いを見くらべるのも、本展の楽しみのひとつです。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)