佐藤製薬のキャラクター「サトちゃん」生みの親が、西宮でデザイン展
昭和時代に、映画、舞台、絵本、テレビ番組などで活躍したグラフィックデザイナー、土方重巳(1915~1986)。彼の業績を回顧する『土方重巳の世界展』が、10月6日から「西宮市大谷記念美術館」(兵庫県西宮市)でおこなわれます。
土方は1915年(大正4)兵庫県生まれ。1938年(昭和13)に多摩帝国美術学校(現・多摩美術大学)を卒業して、東宝に入社します。同社では、戦前の東宝映画を代表する『馬』をはじめ、原節子や榎本健一(エノケン)の主演作など多くのポスターを手掛けました。戦後はフリーランスとして活躍。『大いなる幻影』、『北ホテル』、『石の花』をはじめとする名作映画のポスターや、東京バレエ団、藤原歌劇団、劇団民芸などの舞台公演のグラフィックデザインを手掛けています。
また、絵本やテレビ番組など子ども向けの仕事でも活躍しており、NHKで1959年(昭和34)から始まった未就学児童向けの番組『おかあさんといっしょ』の、番組内人形劇「ブーフーウー」のキャラクターデザインを担当しました。ほかには、佐藤製薬の象をモチーフにしたキャラクター「サトちゃん」も彼の仕事です。
土方が手掛けた映画ポスターは主に手描きイラストを用いており、レトロな趣が漂っています。現在のデジタルデザインしか知らない人には、かえって新鮮かもしれません。また、「サトちゃん」など今日でも愛されている仕事を見ると、グラフィックデザインの身近さと影響力が分かります。当時を知る人はもちろん、平成世代のデザインファンにもおすすめです。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)