イッセー尾形、大阪の小劇場で「実験に居合わせてもらう」
名優・イッセー尾形が「故郷のような劇場」と語る「近鉄アート館」(大阪市天王寺区)で今春、新シリーズ『イッセー尾形の妄ソー劇場』を上演。14日に大阪で記者会見がおこなわれ、同劇場への心境を話した。
数々の映像作品に出演する一方、ライフワークとして一人芝居を発表し続けるイッセー尾形。近年は、夏目漱石作品の脇役にスポットを当てた一人芝居を発表していたが、今回はそこから一歩進み、漱石以降の文芸作品をピックアップし、太宰治『斜陽』の主人公の老後など、名作から生まれたさまざまな妄想世界を見せる。
「いわば明治から現代に至るまでの、普通の人たちの日常の日本史。作品が現代に近付くと庶民の意識が自由になったけど、その足を引っ張るモノも出てきた気がします。こう説明すると理屈っぽいけど、舞台は面白いですよ。難しいことを考えて、面白い舞台をやるんだ」と笑った。
今回上演する5作は、昨年の「近鉄アート館」公演で日替わり上演した新作が中心。近鉄アート館の空気感と大阪の観客は、新しいネタを下ろすのにピッタリなんだとか。
「こう言うと語弊がありますが、完成した作品をご覧くださいというより、『こんなことを試したんですけど』という実験に居合わせてもらう空間。お客さんもまた『ここには何かあるんだ』と肯定的に観てくれるから、その眼差しや息づかいを頼りに、一歩ずつ進めていけるんです」という。
レパートリーのなかには「大阪のオバちゃんの生命力のある声を聞いて、キャラを変えた」という作品もあるほど、同館および大阪の街は、30年以上に渡る一人芝居のキャリアを支えてきた場所。その感謝も込められた、スペシャルな舞台が期待できそうだ。日程は、4月4日~7日で、チケットは5000円(発売中・当日は500円増)。
取材・文・写真/吉永美和子
(Lmaga.jp)