空間の世界観に没入、生と死を問うボルタンスキー展、大阪で

現代フランスを代表するアーティストの一人、クリスチャン・ボルタンスキー(1944~)。彼の初期作品から最新作までを紹介する『クリスチャン・ボルタンスキー-Lifetime』が、国立国際美術館(大阪市北区)で、5月6日までおこなわれている。

ボルタンスキーは、1960年代後半から短編フィルムを発表し始め、1970年代には写真を積極的に用いるようになった。1980年代に入ると明かりを用いたインスタレーションを手掛けるようになり、子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせた「モニュメント」シリーズなどで高い評価を獲得。それらの作品は大量の死者の存在、具体的にはナチス・ドイツのユダヤ人大量虐殺を連想させるとして大きな議論を巻き起こした。彼はその後もさまざまな素材を用いて制作しているが、一貫しているのは「死」や「不在」がテーマであることだ。

展覧会は青電球で「DEPART(出発)」と表示された作品から始まり、不気味な映像作品と暗闇のなかで響く心臓の鼓動音を経て、大量の肖像写真や家族のアルバム、あるいは衣服、映像などを用いた作品群へとつながっていく。なかには影絵を用いたファンタジックな作品もあるが、全体的に重くて暗い。常に「死」を感じ、「生きるとはどういうことか」を問い詰められるのだ。現代社会では日常生活と死が分離されているが、本来、生と死は不可分のはず。展覧会は赤電球で「ARIVEE(到着)」と表示された作品で終了するが、ボルタンスキーが投げかけた根源的な問いかけは、いつまでも観客の心を捉えて離さないだろう。

取材・文・写真/小吹隆文(美術ライター)

(Lmaga.jp)

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