村上春樹の翻訳作に挑む矢崎広「迷路にハマる」
2018年に初演し、好評を博した『リーディング・シアター「レイモンド・カーヴァーの世界」』が今年も「兵庫県立芸術文化センター」(西宮市)で開催。村上春樹翻訳のレイモンド・カーヴァー作品を4人の俳優が読むスタイルで、昨年に続き出演の手塚とおる以外、仲村トオル、平田満、矢崎広は初出演だ。31歳と出演者のなかで最年少の矢崎が公演について語った。
空港での父親と息子の会話が続く『菓子袋』と、清掃業者と家の主のやり取りを描いた『収集』をリーディングする矢崎。この2作は、演出を手掛ける谷賢一が矢崎のために選んだという。「自分に合うかと問われたら、それはわからないですが、僕がこの年で読んでも面白いと思う作品。特に『菓子袋』は父と子の話なので、僕の年齢設定でもアリではないかと思います」。
出演を機にカーヴァーの作品に触れたと言い、「オチがないので最後におっとっと・・・、となりますが、そこが最高だと思います。読み進めるときは重たい扉を開ける感じでしたが、入ったら抜け出せない。この後、どうなるんだろうと想像も膨らみます」と、今はすっかり夢中になっていると話す。
「『菓子袋』では、なぜ空港で父と子が会って、お父さんは何を思って話し始めたのか分からないことばかりですが、それぞれの表情も浮かぶし、菓子袋を持つ手も浮かびます。どんな空港なのかも、なんとなく見えていて。村上さんの翻訳だからこそ、人物像や状況がありありと見えてくるのだと。また、それこそが『なぜ?』というカーヴァー作品の迷路にはまる理由だと思います」と、その魅力を語った。公演は5月25日・26日の昼2時から。チケットは4500円(全席指定)で発売中。
取材・文・写真/岩本和子
(Lmaga.jp)