カメレオン女優・森川葵「あのお芝居は、あの現場でしかできない」

ギャンブルの強さで階級を決める私立百花王学園。巨額の活動資金をもとに学園を牛耳る生徒会に挑むのは、最強のJKギャンブラー・蛇喰夢子(浜辺美波)。さらに、「非ギャンブル、生徒会への不服従」を謳う反生徒会組織の存在も明らかになり、学園では三つ巴の戦いが始まる・・・。そんな『映画 賭ケグルイ』で、夢子と共闘する早乙女芽亜里を演じるのが、作品ごとに自在に役を演じ分けるカメレオン女優・森川葵だ。映画評論家・ミルクマン斉藤が話を訊いた。

取材/ミルクマン斉藤 写真/バンリ

「『わたし、演ってます!』みたいなのは初めて」(森川)

──『賭ケグルイ』、TVドラマのシーズン1からずっと拝見してます。2015年の主演映画『おんなのこきらい』以来、ずっと森川さんの活躍を追っかけていますが、『賭ケグルイ』での徹頭徹尾なハイ・テンションぶりは常軌を逸していて、それだけでのめりこんでしまいました。

ありがとうございます。

──同作では、今どき演劇でもあまり見かけないオーバーアクトの連続ですが、とりわけ森川さんはシーズン1の初回から飛ばしまくってますね。

そうですね。あそこまで「わたし、演ってます!」みたいな演技は初めてです。あのお芝居はあの現場でしかできないですし、ほかのところで求められても違うかなぁと。英勉監督を信頼してるからこそ、あそこまで吹っ切って持っていけるというのがありますね。

──英監督は以前から、映画に漫画的な表現を大胆に取り入れてますが、『賭ケグルイ』はひときわ特殊な感じです。特にTVシリーズはいくつかの限定された舞台的な設定や装置のなかだけで物語が進んでいくし、モノローグや観客だけに聞こえるようなアサイドもある。普通の映画やドラマとはかなり異なるお芝居が求められているわけですよね。

そうですね。『賭ケグルイ』は『賭ケグルイ』だけの演技みたいな感じがします。

──特に勝負台の下からのライトが強烈で。真っ白になったり、影ができちゃったり。それでも美しく見えちゃうから、さすがの女性陣のキャスティングだなと思うんですけれど。

あれを監督は「女優ライト」って呼ぶんですけれど、私と(浜辺)美波ちゃんは2人で「恐ろしいライト」って呼んでます(笑)。もう、ちょっと怖い。一歩間違えたらオバケみたいに映っちゃうから。

──森川さん演じる早乙女芽亜里は、主人公・蛇喰夢子といちばん近い距離にあるキャラクターですが、TVシリーズのシーズン1から2、そして、その続きから始まる映画版を通じて、関係性が次第に変化してきます。敵対関係から妙な連帯感が生まれて、さらにはレズビアン的な要素も加わってくる。あのあたり、2人でどうやって連携させているのですか?

シーズン1で芽亜里が負けて、夢子が「支払ってもらいます」って言うときに、監督が「もっとぐっと寄っちゃってみようか」みたいな、そういう感じから始まったんですけど、だんだん2人とも「こういう感じだよね」と慣れてきて。ぐーーって夢子から私に寄ってきたりとか(監督の指示を待たずとも)少しずつできてきてますね。

──沈着冷静なのに不意にネコっぽくなる夢子の邪悪さに対し、感情が昂まるとガラが悪くなったりするのに、意外に純真な芽亜里といった対照的なキャラクターのコンビネーションが、回を増すごとにますます完成されていってる感じがします。

そうですね。撮影現場で美波ちゃんと話していると落ち着くんです。年齢的には下なんですけど、中身が落ち着いてるから、話しているときのテンポとかもすごく似てるというか、近い感じがするので、ペースを乱されずに話していられるんです。

──素の状態から関係性が保てているという感じですね。超ミーハーな鈴井くんを演じる高杉真宙さんはどうですか? 彼も幅の広い俳優だと思いますが、『賭ケグルイ』に関してはのっけから大げさな身振り手振りを伴った絶叫続きで(笑)。

あれは無いですよねぇ(笑)。私も何回も共演させていただいていますけど、「マッヒーってこういうお芝居もするんだ」って、スゴい新たな一面を見ましたね。しかもシーズン1のときなんて、ギャンブルしているところをモニター越しで見て、独りで「わ~~!」みたいなのをやってる。「わ~~!」ってやりながら、カメラに向かって状況を説明するとか。あれをサラッとやるんですけど、本当はすごく難しいと思うんです(註:シーズン1「ESPゲーム」の回)。

「なぜか息が合ってしまうんです(笑)」(森川)

──あれ以上に難しい説明セリフってないですよ(笑)。

実際にギャンブルの場がどうなってるとか分からないから反応も難しいだろうし。でもそれを演るにはいちばん台本の流れを分かってないと演れないじゃないですか。相当読み込んでいますよね。

──いわば彼がストーリーテラー的役割を背負ってますもんね。

そうなんですよ。実は陰で背負っていたはずなのに、映画では新渡戸九という役(報道倶楽部の記者)に・・・「全部セリフ持っていかれちゃったねぇ」って(笑)。

──確かにそのあたりは少し寂しかったですが、今回の映画ではシーズン1で夢子と芽亜里が組んでコテンパンに負かした木渡潤(矢本悠馬)が復活して。森川さんと矢本さんのコンビネーションも最高じゃないですか。

まさか木渡が復活してくるとは思わなかったので、ついつい監督に会った日に、「芽亜里は木渡とはタッグは組まないと思います」って言いました(笑)。言ったんですけど「それじゃ話が進まない」と。

──でも、組んでみたら手練れの漫才コンビのようなリズムの良さで。

監督は「映画版はもっとカッコ良く撮るつもりだった」と(笑)。シリアスに、というか、もっと「できる2人」みたいな感じで撮ろうと思っていたのに、「こういうつもりじゃなかったんだけどなぁ」なんて監督に言われて(笑)。

──なんか暴走が止まりませんよね。ゲームが盛り上がってくるにつれて、2人の顔面演技の応酬もスゴいことになっていくんですけれども。しかも木渡は精神崩壊までいっちゃう。あの一連のやりとりは監督の演出ですか?

あれは矢本さん発信ですね。上手いし面白い、やっぱりセンスがありますよね。私、矢本さんとはなぜか息が合ってしまうんです(笑)。だから、好きな笑いが同じなんじゃないかなぁ、ってすごい思います。

──今回、映画版では初登場のキャラクターが多いですが、とりわけ森川さんと犬八十夢役の伊藤万理華さんとのカラミが多いですよね。元・乃木坂46の伊藤さんの演技を、実は初めて見たのですが。

私もたぶん初めてですね。台本を読んでいるだけだと名前しか出てないから、男設定なのか女設定なのか分からなくて。でも現場に行ってみたら、初日が確か犬っ八のアジトみたいなところで子分たちと一緒にいたところだったんですけど、すごくかわいい愛せるキャラクターになっていて。万里華ちゃんはもちろん女の子ですけど、あの少年感もすごい良かったですね。

──今回、森川さんはいくつかのシーンかで「アクション」を披露されてます。

監督には「アクションはできません」とシーズン1のときに言ったんです。でも言ってしまったおかげで、「芽亜里にアクション付けました」って(笑)。それにアクションの規模がだんだん大きくなっているんです。

──反生徒会組織・ヴィレッジに捕らわれるシーンでは宙を飛んでましたねぇ。

そうなんです。事前に「ワイヤー使います」とだけ言われてたので、「私、ワイヤー初めてです」という話はしてたんですけど、当日現場に行って、アクション部の方が実際に芽亜里の動きを見せてくれたときにビックリしちゃって。「これをやります」と当日言われても・・・って感じになりました。

──心の準備ってものが要りますもんね。それにかなり放物線を描いてキレイに飛んでる。

本当に結構飛んでるんですよ。落ちていくとき、若干ジェットコースターみたいな気分になるんですよ。下向いてスカート押さえて「イヤ~~~~!」って言いながら落ちなきゃいけないのに、顔が固まっちゃって「ヒッ」となってお芝居にならなくて。でも、納得出来ないから「もう一度お願いします」って何回もやらせてもらって。で、やっとなんとかお見せできる形になりました(笑)。

──ちょっと苦手意識が解消できました?

そうですね。正直、アクションは苦手だからやりたくないと思っていたんですけど、でも、今回ワイヤーだけですけどやってみたら結構楽しくなって。だからやってみないと分からないことはいっぱいあるなぁ、って。もし機会があればアクションにもチャレンジさせていただきたいです。

(Lmaga.jp)

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