滋賀のアメリカ美術が和歌山に遠征、ニューヨーク・アートシーンを俯瞰する
「滋賀県立近代美術館」(以下、滋賀近美)が所蔵する日本屈指の戦後アメリカ美術のコレクションが、「和歌山県立近代美術館」(和歌山県和歌山市)で、6月8日よりまとめて展示される。
同企画展『ニューヨーク・アートシーン』は、滋賀近美が改修工事で長期休館中のために、和歌山でおこなわれるもの。第2次大戦後に文化面でも世界の覇権国になったアメリカの中心、ニューヨークに焦点を当てる。戦火を逃れてヨーロッパから移り住んだ多くの作家たちが最新の美術動向を伝え、その影響を受けた若い作家たちが次々に登場した。
画家の激しい身振りや広漠とした色面の広がりから生み出されるロスコらの「抽象表現主義」、生活と芸術を等価とみなした「ネオ・ダダ」、大衆文化と大量消費社会を背景にしたウォーホルらの「ポップ・アート」、美術の根源を見つめた禁欲的・還元的な「ミニマルアート」など、多様な芸術表現が生み出された。また、草間彌生や河原温など多くの日本人作家もニューヨークで活躍している。
本展ではそうした20世紀後半のアメリカ美術の流れを、滋賀近美のコレクションを中心とした約100作品でたどる。滋賀近美に行ったことがない人はもちろん、バスキアなど同館の作品を見慣れている人にとっても、今までとは異なる環境で名作を見られるレアな機会だ。期間は9月1日まで、料金は一般800円。
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)