京都で活躍した謎の蒔絵師、化学分析もふまえその実像に迫る
江戸時代中期に京都で活躍しながらも、その実像が謎に包まれた蒔絵師・永田友治。彼の作品を展観し、化学分析も交えてその魅力に迫る展覧会が、「MIHO MUSEUM」(滋賀県甲賀市)で、6月8日からおこなわれる。
友治は、江戸時代中期の正徳・享保年間(1711~1736)頃、京都で活躍した琳派の蒔絵師と伝わっている。彼の作品は尾形光琳風の意匠に倣い、独自の青漆(緑色系) や友治上げと呼ばれる錫粉を使った高蒔絵を用いる独特のものだ。また、光琳が使用した円印や光琳の号に一文字を足して自分の号にするなど、自分が光琳の後継であると強く意識していた。
ところが、それ以外の情報が少ない。彼の作品は存命中から高級品として珍重され、江戸琳派の祖・酒井抱一も友治を琳派の作家として認めていた。これほど高く評価されていたのに、今も実像が謎に包まれているのは極めて異例だ。また、彼はある時期から大阪に下向しているが、その理由もはっきり分かっていない。
本展では永田友治の作品をできるだけ多く集め、今後の研究の基礎資料を提供するとともに、その魅力を紹介する。また、友治が作品に使用した素材の化学分析結果もふまえて、大阪下向の謎にも迫る。期間は7月15日まで、料金は一般1100円
※友治の「友」は右肩に点あり
文/小吹隆文(美術ライター)
(Lmaga.jp)