ナルト歌舞伎に挑む中村隼人「成功したときの達成感は大きい」

南座(京都市東山区)で上演中の南座新開場記念 新作歌舞伎『NARUTO -ナルト-』。岸本斉史の同名漫画を歌舞伎舞台化し、2018年8月に東京「新橋演舞場」で初演され高評価を得た本作が、満を持して南座に初登場する。坂東巳之助演じるうずまきナルトのライバル、うちはサスケを勤めるのは、NHK BS時代劇『大富豪同心』での主演も好評、成長著しい歌舞伎界のホープである中村隼人。初演時の手ごたえを尋ねると「再演が決まってから感じた」と答えた隼人。巳之助、演出家のG2とともにイチから作品づくりに携わってきただけに、本公演にかける思いは熱い。

取材・文/岩本和子

「実は歌舞伎って漫画と相性が良い」(中村隼人)

──本作は、初演から演出家のG2さんや巳之助さんとお話しながら作っていったそうですね。

できること、できないことのディスカッションは沢山しましたし、改めてお芝居の大変さも知りました。僕たちは古典の歌舞伎で生きてきた人間なので、イチから作ったものが評価されたことはすごくうれしかったです。古典で評価されたときは、どこかで「作品がいいから」と思いますが、新作の場合は前例がないからこそリスクも大きい。でもその分、成功したときの喜びや達成感は大きかったです。

──漫画作品の歌舞伎化は『ワンピース』に続いて2作目ですね。

実は歌舞伎って漫画と相性が良いんです。漫画での決めカットは、大体1ページくらい使うじゃないですか。歌舞伎には見得があるので、そこにお客さまの視線が集まります。それはカット割りと似ていますね。

──隼人さんご自身は、演じられるサスケについて「自分自身とは反対の性格」だと製作発表でおっしゃっていて。そういう人物像に対して、どう歩み寄られたのですか?

舞台は心情の変化をお客さまによりダイレクトに伝えられるので、サスケの抱えている闇、寂しさ、悲しさを存分に出していけるように心がけています。みんなでいるシーンでも、自分だけ斜に構えていたり、しゃべっていないときも心情が出ると思うので。あとは芝居の受け方。聞いたことに関して正面から受け止めるのがナルトとしたら、サスケは1回自分のなかで考えるとか・・・。外見的には、歌舞伎で青い化粧は、お化けとか人間ではないものに使われるのですが、あえて化粧に青を入れて闇を表現しています。

「ナルトとサスケの違いをまず出す」(中村隼人)

──ナルトとサスケの関係性はどのように描かれますか?

ナルトとサスケの根本には孤独があるのですが、2人とも違う孤独を抱えています。最初から何もなかったナルトと、あったものを失っていったサスケ。そういう2人の違いをまず出すこと。そしてサスケの闇が深ければ深いほど、ナルトのからっとした明るさがより際立つと思うので、そこがうまく伝えられたらと思っています。

──本水を使ったなかでの立廻りもあります。ナルトとサスケが対立するなかで揺れ動く心情を描きつつ、歌舞伎としても見せる場面でもあり、その2つを並行して演じるのは難しくなかったですか?

今回、ナルトとサスケが最後に戦うのは「終末の谷」。ナルトとサスケが初めて分かり合えなかった場所であり、分かり合えた場所でもある。お芝居として一番大事なところなので、エンタテインメントに寄らないようにしました。一つひとつの太刀筋(たちすじ)にサスケの感情を乗せて、「思いを断ち切る」ということを意識しながらやっていますね。水遊びしているように見えないようにと巳之助にいさんとも話し合って。男と男のぶつかり合いというか、拳を交えないと分かり合えない、どこか不器用な2人を出せたらなと。そこはずっと、初演でも意識しています。

──ナルト役の巳之助さんは、どんな方でしょうか?

僕は、絶対的な信頼を置いています。初舞台のときからなので15年以上のお付き合い。一番身近にいた先輩で、自分がダメなときも、お芝居のことで親身になって相談に乗ってくださいました。絶対に間違ったことはしない方です。

「歌舞伎界から必要としてもらえる役者に」(中村隼人)

──今回はナルトの最大の敵、うちはマダラ役で中村梅玉さんが出演されます。梅玉さんは前作をご覧になって出演を快諾してくださったと聞きました。

本当にありがたいことです。大先輩が「ふたりの熱量が本当に良かった」と、受けてくださったので。僕は、古典でのほとんどの役を梅玉のおじさまに教えていただいているので、うれしいしですし、大変ありがたいです。今までの努力が報われた感じがします。

──本水での立廻りをはじめ、体力を使う場面が多いと思いますが、普段は何かトレーニングなどされてますか?

よく聞かれます(笑)。普段は特別なトレーニングはしていないです、お稽古だけです。ジムで鍛える筋肉と、歌舞伎の舞台で鍛える筋肉は違いますね。何回もお稽古をして体力をつけていくしかないです。ただドラマで3カ月半、歌舞伎から離れていたので大変です(笑)。

──歌舞伎のためのインプットは、何かされていますか?

去年はラスベガスに、一流と言われるショーを見に行きました。元オリンピック選手などがやっているショーなので、身体面での真似はできませんが、演出方法や照明の使い方、舞台機構、作品構成を見て、大変勉強になりました。

──今回の新作歌舞伎や古典の歌舞伎にも生かして。

はい。古典の歌舞伎は一言一句、同じものを辿って行かないとだめだと思っています。先人から受け継いだものを変えちゃいけない。でも、古典と新作には共通する部分があると思うので、いろいろな経験を両方に生かせていきたいと思います。今年はスーパー歌舞伎II『新版 オグリ』で小栗判官を演じさせていただくので、役者としてもっとステップアップしていきたいです。

──最後に、今後の豊富を聞かせてください。

僕は歌舞伎界から必要としてもらえる役者になりたいと思っています。『NARUTO -ナルト-』で、脇を固めてくださっている方々は、古典の作品でもお声がすごくかかっているんですよ。そういう人ってすごいですよね。僕も「この役は隼人」と言われるような役者になりたいです。

(Lmaga.jp)

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