白石和彌監督「弱い立場を描きたい。今の社会全体が見えてくる」
映画監督・白石和彌が12月5日、大阪市内で開催されたセミナー『映画テレビ技術フェア in 関西2019』に登壇。これまでの作品や映画への思いを語った。
2010年に『ロストパラダイス・イン・トーキョー』で長編デビューしてから、今年公開された『麻雀放浪記2020』や『凪待ち』、現在公開中の『ひとよ』までのエピソードを1時間半たっぷり披露。2016年の『日本で一番悪い奴ら』以降は「シネスコ(シネマスコープサイズ、通常よりもワイドな画面サイズ)」で撮っていることや、2017年の『牝猫たち』をきっかけにアフレコを多用していること、演出家としてのテクニカルな面などを惜しげもなく明かした。
また、ギャンブル依存症の男を香取慎吾が演じた『凪待ち』については、「小学生の頃からSMAPとして活動し、僕らが想像できないほどの経験をしてきている。僕ら演出家の意図を受け止めて、それを表現として出すスピードがとにかく速い。僕らが2つ、3つしか伝えられなかったとしても10ぐらい出してくれる。すごく楽しい現場でした」と絶賛。
さらに、「演じると陰もあるけれども、どこかかわいさがある。なので怖くなりすぎない。これは特殊な才能だと思う。だから当初は予定していなかった、妻のへそくりを抜くシーンも、彼ならいけると思った」と、香取だからこそ、クズなエピソードを増やすことができたのだとか。
「どの作品も根底にあるのが、弱い立場、社会から外れてしまった人を描くこと。そこは僕の師匠でもある若松孝二さんと同じ。一生懸命、ずる賢く生きている姿からは滑稽さというか人間の面白みもある。下の世界に焦点を当てることで、今の社会全体が見えてくる」と、映画監督しての流儀を語った。
現在公開中の桑原裕子原作の映画『ひとよ』では、子どもたちの幸せを願って、夫を殺した母と子どもたちの物語が描かれている。佐藤健、鈴木亮平、松岡茉優、佐々木蔵之介、田中裕子らが出演。
(Lmaga.jp)
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