地上波生放送に登場するたび話題に、エレカシ宮本浩次からなぜ目を離せないのか

先日放送のNHK『うたコン』に生出演した際ツイッターにトレンド入りするなど、地上波の音楽番組に登場するたび話題をかっさらう、エレファントカシマシのボーカル・宮本浩次。ステージ上での彼のパフォーマンスが視聴者を惹きつけてやまない理由は何なのか。

エレファントカシマシのボーカリストとして1988年にメジャーデビューした宮本。初期衝動感溢れるロックサウンドと伸びやかなメロディに乗せて歌った文学的かつ愚直で熱いメッセージで、音楽ファンの支持を集めた。そして、宮本の無骨かつチャーミングなキャラクターも手伝い、現在では国民的歌手として愛される存在となったのは周知の通り。

2018年はエレファントカシマシとしてはドラマ『宮本から君へ』の主題歌『Easy Go』を含む、通算23枚目のアルバム『Wake Up』をリリース。デビュー30周年目にしてバンド史上最高の沸点へと昇りつめる一方、個人名義で椎名林檎との『獣ゆく細道』や東京スカパラダイスオーケストラとの『明日以外すべて燃やせ』などのコラボレーションを展開してきた。

今年に入ってからは『冬の花』『昇る太陽』、そして映画版『宮本から君へ』の主題歌として横山健(Hi-STANDARD)を迎えて制作した『Do you remember?』といったソロシングルを立て続けに発表。齢53歳にして、あたかもバンドを始めたばかりのティーンエイジャーのようなパッションを爆発させている。

◆常に本気(ガチ)勝負であり続ける姿勢

以前『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で椎名林檎とパフォーマンスを披露した際には、文字通り野に放たれた獣のような荒ぶる歌唱と謎のダンスを披露し、まさかのツイッタートレンド入りした宮本だが、先日のNHK『うたコン』でも、ステージとゲスト席を自由に行き来しながら忌野清志郎の名曲『雨上がりの夜空に』などを熱唱。またしてもトレンド入りを果たし、世間の話題となったのは決して偶然ではないだろう。

地上波生放送の番組の多くが予定調和の茶番と化した時代に、彼は全身全霊でテレビの向こう側の人々に己の何がしかを伝えようと懸命にもがく。その決定的に異質な存在感に、見ている方は「これって放送して大丈夫!?」と当惑しながらも、目を逸らさずにいられなくなる。そんな「常に本気(ガチ)勝負」であり続ける姿勢こそ、宮本浩次という表現者のほかにはない魅力であり、どれだけメジャーになろうとも彼が決して消費されない理由でもあるのだ。

2020年3月からは、30年を超えたキャリア初のソロでの全国ツアーを開催する宮本(関西では3月19日「神戸国際会館こくさいホール」(神戸市中央区)、25日「フェスティバルホール」(大阪市北区))。旧知の仲間とあえて離れて新たな土俵に立った彼が果たしてどんなステージを見せてくれるのか、ワクワクが止まらない。こんな時代だからこそ、「かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう」を地でゆく男のドキュメンタリーを真近で見届けたい。

文/井口啓子

(Lmaga.jp)

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