2年連続でM-1出場 見取り図「憧れの人たちに近づけるように」
2年連続で『M-1グランプリ』の決勝へ進出したお笑いコンビ「見取り図」。2018年に関西の人気番組『オールザッツ漫才』(毎日放送)で優勝、2019年には霜降り明星らをおさえて『第4回上方漫才協会大賞』で大賞に。大阪在住のコンビのなかで、全国的なブレーク候補の筆頭格。今回は、そんな見取り図の盛山晋太郎とリリーに、これまでたどってきた道のりについて話を訊いた。
取材・文/田辺ユウキ 写真/南平泰秀
リリー「ハングリー精神が生まれました」
──今回の写真撮影は、お二人の希望で「チケットを手売りしていた『よしもと漫才劇場』前で」とお伺いしました。吉本の若手芸人は誰もが通るチケット手売りですが、いつ頃までやっていらっしゃいましたか。
盛山「4、5年前だったと思います。寒空の下でずっとやっていました。僕の場合、当時はもっと太っていて見た目が汚かったから、だれも買ってくれないんですよ。逆に、めっちゃ人気があるやつは、渡された予定枚数がすぐになくなって、僕みたいに人気のない芸人から引き取って、また売っていました」
リリー「手売りは毎日苦痛でしたが、ハングリー精神がそこで生まれました。早く手売りをしなくて良い位置までいこうって。だから僕らにとって思い出の場所なんです」
盛山「リリーが写真撮影のときに、チケットを持った手を高々と上げていたじゃないですか。あれはマジで嘘!こいつはそんなことしなかったですよ。めちゃくちゃ無愛想でしたから(笑)」
──ハハハ(笑)。逆に「あいつはチケットをたくさん売る」という芸人はいるんですか。
盛山「いわゆる『手売りの鬼』ですね。僕らの世代は、ラニーノーズの洲崎です。全席を洲崎が売ったんちゃうかってときもありました。あと、祇園さんもすごかったですね」
リリー「東京吉本だと、御茶ノ水男子がすごかった。手売りだけで100枚以上売っているときもありましたね」
──それでも今では、見取り図がチケットを手売りしようものなら大混乱になりますよね。さっきの撮影時も人だかりができていましたし。ただ見取り図は、2007年に結成してから、どちらかというと苦節が長かった印象を持たれますよね。2000年代後半以降、デビューからブレークまでが早いコンビが増えましたから。
盛山「僕なんかその間、借金が膨れ上がっていましたからね。今年、7年間抱えていた借金を全部返せたんです。一時期は家賃も払えなくなったので、月額7千円とかのトランクルームで生活することもありましたから。今だから言えることですけど。社会から逸脱していました。正直、まともな生活は送れなていなかったです」
リリー「あと、(劇場出演をかけたネタバトルのなかで)昇格・降格のシステムがあるんですけど、一番下のオーディション組まで落ちたときがあって。そこは、素人のコンビばかりのクラスなんです。一度はトップクラスまでいったのに、1カ月も経たないうちに転げ落ちてしまった。その状況が1年くらい続き、後輩の目も痛かった。あのときが一番つらかったですね」
盛山「笑わせることが好きなベタな大阪人」
──同期はどんどん人気が上がっていくなかで、その状況は大変ですね。
リリー「吉田たち、コマンダンテには負けたくなかったし、あとデルマパンゲ、ジソンシンとか、同期のことはみんな意識していました」
盛山「東京では、渡辺直美などスターが出てきていたし、大阪では吉田たち、コマンダンテが賞も獲って着実に上にいっていた。でも、僕らは賞を取っていない。あまりに悔しくて、難波がひっくり返るくらい叫びましたよ」
──コンビとして何か変えていこうとしたところはありますか。
リリー「いや、技術は変化していったと思いますが、芸人としての心構えは最初の頃から変わっていません。僕自身、もともと嘘をついたり誤魔化したりすることが嫌いだし、『無理してギャグをやろう』とか、そういうことはしたくなかった。きっとそんなのは寒いだけ。常に、自分ができる範囲のなかで一番を目指すようにしています」
盛山「僕は学生のときから調子乗りで、笑わせることが好きなベタな大阪人。学生時代は人を笑かすために、わざと遅刻して、変な格好で教室に入ったりしていました。そういう感覚でずっとやっています」
──ちなみに見取り図ってよく「仲良しコンビ」って言われるじゃないですか。面と向かって言い合うのは恥ずかしいと思うんですけど、お互いの好きな部分はありますか。
リリー「・・・・・・元気なところ」
盛山「いや、元気ってなんやねん。小学生の意見か。もっとあるやろ!」
リリー「元気って大切やん? 昔から、元気な人と仲が良かったんですよ。で、そういう元気な人をイジって、人を笑かしていました」
──盛山さんは、リリーさんのどういうところが「良いな」と思いますか。
盛山「こいつは飲んだ翌日もちゃんと起きるし、きっちりしていてロボットみたいなところがある。僕は朝も弱いし、だらしないから、めちゃくちゃ頼っていましたね。あと、自分は心配性なんだけど、こいつはどんと構えている。今年の『M-1』の準決勝で、僕は尋常じゃないくらい緊張していたんですけど、リリーはいつも通りだった。いろいろと助けてもらうことがありますね」
──『M-1』のお話が出ましたけど、今回の決勝の結果次第では、2020年は楽しみな1年になりそうですね。
盛山「そうですね。ただ、とにかくおもしろい漫才を作り続けていたい。でも、ひとりでも多くの方に漫才を見てもらうためには、テレビなどの露出を増やしていきたいんです。僕らは、『VS嵐』(フジテレビ)に出ることが目標なんです。なんとか間に合いたい」
リリー「『M-1』で結果を残して、2020年は大阪で天下を獲りたいです。千鳥さん、ダイアンさんのように誰もが認める地位をつかみたい。お二組とも、一番格好いい東京への行き方ですよね」
盛山「それは分かる。芸人も、みんなが認めている存在。正統派な東京進出の仕方。憧れの人たちに近づける1年になるように頑張ります」
(Lmaga.jp)