新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、大小問わず劇場で演劇を観ることがかなわない現状。そんな外出自粛のなかでも舞台を楽しんでもらおうと、過去の名作舞台や、自粛のために中止となった演目の無料動画が、数多く配信されている。なかでも演劇初心者でも楽しめそうな作品を、ジャンル別にチョイス。心惹かれる作品があれば、いつか実際に劇場まで行ってみよう。

【小劇場系】

●ＭＯＮＯ『ぶた草の庭』

昨年３０周年を迎えた京都の劇団で、なかでも近年の傑作と言われた群像劇。舞台が不治の伝染病にかかった人々の隔離施設とは、偶然とはいえ現状と重なりすぎて怖いほど。しかし重たい現実を描きつつも、コメディ調の会話とテンポの良いストーリー運びで「生きていくのはしんどいけど、悪いことばかりじゃない」と思わせるのが、ＭＯＮＯ作品の特長。焦りと葛藤を抱えながら、自然体で生きる人たちの姿に、心のリフレッシュができること請け合いです。

※期間限定：～５月６日

https://youtu.be/nhlS_uDHlvw

●柿喰う客『御披楽喜（おひらき）』

演技というよりダンスに近い動きと、ハイテンポ・ハイテンションで繰り出される台詞に「何これ！？」ととまどいながらも妙に引き込まれる魔力を持つ、東京の劇団・柿喰う客。現在多数の作品を無料公開中だけど、ＮＨＫドラマ『伝説のお母さん』のクズ亭主役で話題となった玉置玲央が出演した、最新作を一押し。元美大生たちの愛憎劇が、アートと人間の美しくも残酷な関係を浮かび上がらせる怪作で、上演時間１時間程度のコンパクトさも良し。

※配信終了日未定

https://youtu.be/VCWQqi_wuyg

【伝統芸能系】

●スーパー歌舞伎ＩＩ『新版　オグリ』

現代的な物語を、フライングや映像などの最新技術を駆使した演出で見せ、若者層を取り込むのに成功した、まさに初心者向けの歌舞伎シリーズ「スーパー歌舞伎」。３月に京都・南座で上演するはずだった作品を無観客上演で撮影し、配信中。生き別れた男女の切ない恋あり、本水を使ったド派手な立ち回りありと、歌舞伎が究極の「娯楽」ということを思い知らされる舞台です。市川猿之助主演のフルバージョン版と、中村隼人主演のハイライト版あり。このほか『歌舞伎座　三月大歌舞伎』も同じチャンネル内で配信中。

※期間限定：～４月１９日

https://www.youtube.com/channel/UCulneJtjMARpEHhWQTlGa6w

●『義経千本桜』

源平合戦後の、源義経と平家の落人たちの後日譚を多角的な視点で描き、歌舞伎の三大名作のひとつと言われる作品。さらにそのなかから、取り分け人気の高い段を３つのプログラムに分けて上演。各プログラムで、勇猛な武将、粗野な小悪党、健気な妖狐と、まったく違うキャラを品高く演じ分ける、尾上菊之助の演技が見どころです。全部見ると６時間近くかかるので、どれかひとつ選ぶなら、歌舞伎界屈指の人気キャラ・狐忠信が活躍するＣプロがオススメ。

※期間限定：～４月３０日

https://www.youtube.com/channel/UCzL2YBulm60QrN0PkdQFaSw

【パフォーマンス系】

●シルク・ドゥ・ソレイユ『６０-ＭＩＮＵＴＥ ＳＰＥＣＩＡＬ』

世界でもっとも有名と言っていいサーカス団が、数多くの名作のなかから見応えのあるパフォーマンスを厳選して、６０分にまとめた映像を不定期で発信中。なかには、ラスベガスの常設劇場限定の『Ｏ（オー）』のように、日本では決して観られない作品も。アクロバットなサーカス芸のすごさはもちろん、コンセプチュアルなメイクや衣裳の繊細さも堪能できるのは映像ならでは。非日常感満載のビジュアルとパフォーマンスは、お子さまと観るのにもピッタリです。

※配信終了日未定

https://www.youtube.com/watch?v=VL0TG_nCqzE

●バットシェバ舞踊団／オハッド・ナハリン『Ｄｅｃａ　Ｄａｎｃｅ』

コンテンポラリーダンスは無料配信がかなり多いけど、ひとつ選ぶとしたら、イスラエルを代表する同カンパニーの代表的な振付を集約したベスト版的作品で。鍛えられたダンサーならではのシャープかつ柔軟な動きにも見惚れるけど、ときにおかしく、ときに超クールな間（ま）とリズムの外し方の妙が、個人的にナハリン振付の大好きなポイントです。特に最初の方の、椅子を使った集団ダンスはほかのカンパニーもカバーしたほどの名振付なので、冒頭１０分だけでも視聴乞う！

※配信終了日未定

https://www.numeridanse.tv/en/dance-videotheque/deca-dance-0?s

文／吉永美和子

(Lmaga.jp)