よく見るあのアマビエ、実は京都大学の所蔵品「所蔵館を明記して自由に使って」
突如、アマビエという妖怪が注目を浴びている。江戸時代に半人半魚で光り輝く姿で海から現れ、豊作や疫病の予言をしたという逸話が伝えられる妖怪だ。「もし疫病が流行ったら私の姿を描き写して人々に見せよ」と言ったとされ、新型コロナウィルスの蔓延により、「疫病退散にご利益があるというアマビエの力を借りよう」とSNSで話題となった。
このアマビエのイラストがどんどん拡散される裏に、見逃されているルールがある。「二次利用」という、インターネットの普及で生まれた公共データの活用に関する取り組みだ。アマビエが描かれた瓦版の資料を所蔵する、京都大学附属図書館職員に話を聞いた。
原資料が不明確な状態だったアマビエ
「アマビエ」は江戸時代後期に肥後の国に生まれたといわれており、挿絵つきで取り上げられた瓦版のイラストが、形を現代に伝える貴重な資料。京都大学貴重資料デジタルアーカイブから見ることができるのだが・・・。
「SNSで2月頃からアマビエがどんどん広がっていたのですが、京都大学附属図書館所蔵の資料の写真が所蔵館の表示のないまま載せられているという状態でした」(同館職員)
この資料は二次利用自由だが、その際は所蔵館を明示するという決まりがある。「所蔵館を示して当館所蔵のオリジナル資料の画像にたどり着き、デジタルアーカイブを活用していただきたいという思いや、暗いニュースが多いなか、少しでもみなさんに楽しんでもらいたいという思いから担当者がツイートしました」といい、3月6日に初めてSNS上で「アマビエ」の所蔵を明記し投稿したという。
チーズトースト、護符、厚生労働省のロゴにも
このツイートも後押しし、アマビエのイラストやモチーフにしたお菓子などをつくる「#アマビエチャレンジ」のムーブメントが生まれた。イラストを使ったリアリティたっぷりなクッキーやトーストを制作する人も登場。
兵庫県西宮市の「廣田神社」ではアマビエの護符を配布したり、厚生労働省の感染予防拡大防止を呼びかけるロゴにも登場したりと、どんどんと「疫病から守る妖怪」としての地位を確立していっている、といっても過言ではない。デフォルメしたイラストもどんどん生まれて和菓子や漫画にまで発展しており、勢いは留まるところを知らない様子だ。
京都大学附属図書館職員は、「二次利用のルールは、資料のタイトルと所蔵館を明記さえすれば自由に使っていただいて良いという簡単なものです。問い合わせを受けた場合は、個人で楽しむためや、商業利用であっても所蔵館明示が難しい媒体での利用の場合を除いて、なるべく守って欲しいと案内しています」とコメント。
また、「本学所蔵資料が活用されているのは非常にうれしく思っています。ご利用の際にはオリジナルの画像がどういったものかをぜひ知っていただきたいので、原資料所蔵館の情報をお示しいただけたら」と呼びかけている。
デジタル化が進み、二次利用方法や著作権は「知らない」ことで見逃しがちなルールでもある。しかし、京都大学貴重資料デジタルアーカイブは、多くの人に楽しんでもらえるようデジタル化して公開したものだ。ぜひ資料タイトルと所蔵館「『肥後国海中の怪』(京都大学附属図書館所蔵)」を明記して使用しましょうね。
取材・文/小田切萌
(Lmaga.jp)