大阪の証券マンに愛されたサンドイッチ喫茶店、6月末に閉店…42年の歴史に幕
大阪のオフィス街・北浜で、サンドイッチ喫茶の先駆け的存在として愛されてきた「蝸牛庵(かぎゅうあん)」(大阪市中央区)。6月30日で42年間の歴史に幕を下ろし閉店する。
店が入るビルの建て替えをきっかけに、3月ごろに閉店を決めたという庵主の橋本元明さん。長年、昼時には相席必至となる人気店だけに、閉店を知った客が「密」にならないよう発表したのは6月に入ってから。閉店を惜しむ反響は予想以上で、SNSでは過去最多の「いいね」がついたという。
「うちは必要以上にお客さまと喋る接客はしてこなかった。でも、良いお客さまに恵まれて『良いお店』と言われたときが1番うれしい。常連さんの注文は『いつもの』という言葉も要らず、世間話をしながらアイコンタクトだけで通じ合えました」と、客への感謝を語る橋本さん。42年間、定休日と盆正月以外は一度も休まず、親の葬儀も定休日まで延ばして店を守り続けてきた。
昭和53年の創業以来、北浜の街と歴史を歩んできた同店。当初はコーヒー専門店で4種だったサンドイッチが、客層の変化に合わせ、現在の24種に増えたのもオフィス街ならでは。バブル崩壊前は、活気ある証券会社などの男性客が9割だったが、時代の流れで禁煙にしてからは軽食を楽しむ女性客が9割に。
また、江戸時代から「薬のまち」として知られ現在も多くの製薬会社が並ぶ道修町の近くでもあり、年々会議での配達サービスの需要が高まったという。元々サンドイッチが好きだった橋本さんは、お得意先からアドバイスをもらったり、客の好みに応えながらメニューを増やし、ベーコンの食べ応えが人気の「BLTサンド」をはじめ、日々リピーターに愛される味を生み出していった。
今後の飲食業界を鑑みて、閉店後の予定は未定というが、橋本さんは「100%楽しみながら終わりたい。いつか『蝸牛庵』の文字とサンドイッチを見かけたら声をかけてください」と笑顔で話す。
現在は、コロナ禍の影響でテイクアウトの客も増え、6月30日の閉店まで限定500箱で対応、店内飲食はアルコール消毒や客同士の距離に配慮しながら通常営業を続ける。営業は10時半~18時(土曜は11時~14時)、日祝休。
取材・写真/塩屋薫
(Lmaga.jp)