コロナ収束に自粛は関係なかった、大阪の専門家会議で明言
大阪府が6月11日、緊急事態宣言が解除されてから初めての「新型コロナウイルス対策本部専門家会議」を実施。ここで、「大阪大学 核物理研究センター」のセンター長・中野貴志教授が、「感染拡大の収束に外出自粛や休業要請による効果はなかった」と明言した。
この会議にオブザーバーとして初めて参加した中野教授は、政府が感染状況の傾向をつかむために用いる指標・K値を発案した物理学者。K値とは、累計感染者数あたりの直近1週間の感染者数を比率で表したもので、日を追う毎に減少するその値の変化をグラフでみた際、傾きが急であるほど収束は近づくとみられる。
「日本では第1波を非常に効率よく収束させ、3月初旬に収束させていたが、間髪を入れずに欧米から感染者が流入し第2波の感染拡大が始まった。その拡大がピークになり、そこから減少になった時期(ピークアウト)は3月28日頃。原因は3連休の気のゆるみではない」と自身の分析結果を説明した中野教授。
吉村洋文知事による「ピークアウトに外出や営業自粛の効果はあったのか?」との質問には、「データを見る限りは、相関が少ない。欧米などは、何か政策の効果が見えた場合にK値の傾きに変化が出ている。大阪の推移を見る限り、それとは関係なく収束したというと考える方が自然」と回答した。
さらに吉村知事が、「(北海道大学の)西浦博教授は4月15日の時点で(国内死亡者が)40万人に上がると示された。どう思うか?」と質問。
中野教授は、「(西浦教授の想定値は)あり得ないと思った。しかし、取られた政策が間違っていたとは思わない。後から考えると過剰だったりするが、そのことをことさら責めたり、完全に間違っているとあげつらったりするのは間違っている。大切なのは冷静な目でデータ蓄積を見返すこと」と語った。
これらの議論のなかで「自粛要請の不要論」について、座長である大阪大学の朝野和典教授は、「例えば東京では接待を伴う飲食というのがクラスターを作っているのが事実。クラスターを作らせないという意味での休業は有効で、次の波が来たときもやる必要がある」と説明。
その一方で、「むしろ重症化させないような方策もあるべき。高齢者、基礎疾患のある人を逆に隔離する方策もあるべきじゃないか、ほかの人たちよりもより強く自粛、外出をやめていただくというアラートを出す必要もある」という意見も。
また、「もう少し深くいろんな人の意見も聞いて、意見を戦わせる必要がある。今日の議論だけで、自粛・休業が無意味だったという結論にはしていただきたくない」と、結論を急がないよう釘を差した。
取材・文・写真/岡田由佳子
(Lmaga.jp)