竜星涼「人を好きになるのに性別は関係ないと思えた」

癒やし系純愛BL(ボーイズラブ)漫画として注目されていた『リスタートはただいまのあとで』が、実写化され9月4日に公開。都会で挫折し、帰郷したツンデレ男子・狐塚光臣を古川雄輝、光臣の心の痛みに寄り添う、おおらかで人懐っこい田舎の青年・熊井大和を竜星涼が演じる。

美しい景色のなかでゆっくり育まれていく男同士の恋を丁寧に描いた同作。古川雄輝とのシーンや地元の人と交流した思い出、さらに役者として自信をつけた舞台の経験などをさまざまな話を語ってくれた。

取材・文/西村円香 撮影/沖本明

「男同士のキス、恥ずかしいと思ったら芝居ができなくなる」

──男性同士の恋愛を描くBL漫画が原作ですが、オファーを受けたときの心境は?

原作漫画を読ませてもらって、BLだからこそ描かれることが多い「葛藤」がないというのが新しいなと思いました。人を好きになるってこういうことなんだ、性別なんて関係ないんだなということが丁寧に描かれているラブストーリーです。だからこそ、挑戦してみたいなと思いました。

──ある秘密を抱えている大和は、やさしいけれど他人に対してどこか壁を感じさせる役ですね。ご自身とはまったく違うタイプですか?

大和と比べると、僕はネアカに分類されると思いますね。ポジティブに考えて、落ち込むことがほとんどないので。大和の場合は笑顔ながらも、そこに潜む「何か」をどう表現していくかが大切だと思い、撮影が始まる前にそれまで大和が歩んできた道を細かく自分の中で考える時間を持ちました。大和は僕にはわからない経験をしているので、難しい役どころではありましたね。

──長野県千曲市と上田市でのロケでは、地元の人と飲みに行ったりもしたそうですね。

どこかおいしい所ないかな~と探して、店の大将と仲良くなって、そこから輪が広がって、知らない間に僕の周りには5、6人の地元の方々がいらっしゃってる状況でした。

知らない土地はつい開拓したくなってしまうし、しゃべるのが好きなのでコミュニケーションも自分からとっていきます。大阪に来たときも、あちこちでプラプラして、うどん屋さんやたこ焼き屋さんなどに行っています。せっかくだから!と、おいしいものをついたくさん食べてしまって、地方に行くと胃が弱くなるんですよね(笑)。

──そんなに食べ歩かれているんですね。それにしても、竜星さんが大阪の街を歩いていたら絶対目立ちそうです!

私服も派手なので、「目立ってしょうがないでしょ」って言われるのですが、歩くスピードがめちゃめちゃ速いから大丈夫なんです。

みんな携帯を見たりしゃべるのに必死だったりして、意外と人を見ていないと思うんですよね。逆に役者をやっている僕らの方が、服装とか様子だとかを見ていると思います。

──作品では光臣が大和の頭をポンポンしたり、キュンとしてしまう仕草がたくさんありました。竜星さん自身にも、そんなカッコいい仕草があったりしますか? よく女性は男性が車をバックさせる動作に弱いなんて言いますが。

・・・あんまり運転しないせいもあると思いますが、本当に駐車が苦手です(笑)。

──シュッと駐車しそうなタイプに見えるのに意外です。

シュッとしたいんですけどねー。でも本来は、カッコつけるためにコツコツ練習するタイプ。デビュー当時なんて、人前でしゃべること、セリフを言うこと自体がなじめなかったし、恥ずかしかった。もう演技のことしか考えなくなったので慣れって怖いな(笑)。

──今回の演技でのキスシーン、ビックリしましたが美しかったです。古川さんとのキスはいかがでしたか? 終わった後、なにかお話されたりしましたか?

古川さんの唇、やわらかったです(笑)。男女のキスシーンだと、終わった後に照れからふざけることもあるかもですが、男性同士だとそれはないですね。1回でも恥ずかしいという理性が出てきちゃうと、僕の場合はお芝居ができなくなってしまうと思います。

「一番欲しかった役者としての自信が芽生えた」──大和のような純朴な青年だけでなく、シリアスな役、コメディタッチの役と竜星さんはとても演技の幅が広い役者さんだと思うのですが、転機になった作品などはありますか?

劇団☆新感線の舞台『修羅天魔~髑髏城の七人 Season極』はターニングポイントでした。それまでは、演技が分からないながらも必死にやっていましたけど、オファーをいただいたときに俳優として成長するには「これだ!」と思ったんです。ちょうど、自分のなかで何かを変えていかないとここまでになっちゃうな・・・と感じていたので、チャンスだと。

自分にとって第2のスタートで、ここで頑張れるかどうかで今後が決まるという覚悟があったんですよね。役柄上、女形の着物裁きや所作なども必要だったので、舞台稽古がスタートする直前まで日舞などの稽古を積み、ボロボロの状態で舞台稽古に入るなど本当に大変でした。

──そこまでの覚悟で挑んでらっしゃったとは!

僕、初めて観た舞台も劇団☆新感線なんです。『髑髏城の七人~アカドクロ』だったのですが、舞台って楽しいんだなと思ったと同時に、そこには極めた人間しか立てない、と思ったほど圧倒されました。

だからこそ、「望んでも立てない人がいるのに、極めていない俺が立っていいのかな。じゃあ、いつなら立てる?準備ができたころには立つチャンスがないかもしれない。実力不足は仕方ない。後悔しないように、自分のなかでやり尽くしてみよう」と。

そんな風に覚悟を決めてやった結果、一番欲しかった役者としての自信みたいなものを得ることができたんです。ようやく役者に向いているかも、役者をやっていて良かったとも思えました。

2018年は上半期が舞台、下半期はNHKの『昭和元禄落語心中』というドラマで落語家を演じて、大変なことをやるのが続いたけど、それに挑戦した、やり遂げたということが今の自信に繋がっています。自信って大事なんですよね。

──確かに、その辺りから竜星さんの演技がより印象的なものになっていった気がします。読者のなかにも、頑張っても結果がでなかったりして、自分に自信が持てない人たちもたくさんいると思うのですが、何かメッセージをいただけますか?

何か本気でやっていればどこかで見ている人がいる。その人が、きっとどこかで引き上げてくれる。だからこそやり続けることが大切だと思います。

──最後に、今後はこんな役者になりたい!という目標はありますか?

チャレンジさせたいと思ってもらえるような役者。イメージに合わせて役を提案されるよりも、この人って全然イメージじゃないけどこの役に挑戦させてみたい、そんな役者になれたら素晴らしいなと。挑戦することによって、自分も知らない新しい自分に出会えるかもしれないですしね。

(Lmaga.jp)

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