柿渋が新型コロナウイルスを不活化、奈良県立医科大学がその効果を確認
「奈良県立医科大学」(奈良県橿原市)の伊藤利洋教授(免疫学)と矢野寿一教授(微生物感染症学)ら研究グループが、世界で初めて、柿から抽出した高純度の「柿渋(柿タンニン)」により新型コロナウイルスが不活化(無害化)するという研究成果を9月15日に発表した。
長年、柿渋の抗菌作用、抗炎症作用について研究してきた伊藤教授。柿渋がインフルエンザウイルスやノロウイルスに対して抗ウイルス効果があることに注目し、新型コロナウイルスでも効果が得られると考えた。
同ウイルスは遺伝子をタンパク質の殻で包み、その殻をさらに脂質膜(ししつまく)で包んだ構造。脂質膜上にはウイルスタンパク質(スパイク)が突き刺さっている。タンパク質に結合しやすい性質を持つ柿渋が、ウイルスタンパク質に結合することで不活化するメカニズムだと推測されているという。
そのアイデアに基づき、矢野教授が口腔内と似た条件(唾液を入れた試験管)に新型コロナウイルスと高純度の柿タンニンを加え、10分間共存させる(接触する)ことで、新型コロナウイルスを1万分の1以下まで不活化できることを実験的に証明した。
伊藤教授は、「今すぐ人に効果があるわけではない」と前置きし、一定濃度の柿渋をまぜた飴やラムネを一定時間(本実験では10分間)口に含むことで、新型コロナウイルスの感染予防効果が期待できると説明。
「ただ単に柿渋が入っていれば良いというものではなく、適切な濃度と適切な接触時間が重要。このエビデンスに基づき製品化する必要があり、柿を食べれば効果が得られるというものでは決してない」と強調する。
さらに、今回の結果は「あくまでも第1ステップとしての基礎研究であり、人を対象とした臨床研究とは研究の性質が異なる。第2ステップとして飴やラムネなどの食品に製品化し、実際の人で効果があるか確認する臨床研究が必要である」と話す。
同大は、企業に医学知識を提供し、医学的に正しい「ものづくり」を通じて社会貢献を行う「MBT研究所」と企業・団体と連携した「一般社団法人MBTコンソーシアム」を運営。
細井裕司理事長は、「(柿渋は)特効薬的なものではないが、今のコロナの状況だとできるだけ早期に世界の役に立つようにしたい」として、この研究成果を製品化して世界に流通できるような協力企業を公募している。
取材・写真/いずみゆか
(Lmaga.jp)