美術館で林海象が映画撮影!? 美術家ヤノベケンジの「シネマタイズ」という制作スタイル

現代アーティストのヤノベケンジが、林海象監督とタッグを組んだ映画『BOLT』が、2月13日より順次、公開される。

撮影は、「高松市美術館」(香川県高松市)でのヤノベケンジの展覧会『CINEMATIZE シネマタイズ』会期中、館内でセットを組んでおこなわれた。映像だけでなく、その製作プロセスでも映画とアートの融合する前代未聞の現場だった。詳細をヤノベケンジに訊いた。

──美術館のなかでの撮影は、ヤノベさんのアイデアだったんでしょうか?

『BOLT』の話は、7年前からうかがっていたんですが、予算と撮影場所のアイデアがなくて、撮影に踏み込めなかったんです。ひとつの解決策のなかで、美術館のなかのインスタレーションを映画のセットとして、そこで実際に永瀬さんたち役者さんが演じ撮影するという案が浮かびました。2016年の「瀬戸内芸術祭」の一環で、高松市美術館で僕の展覧会が決まっていたので、「いっそのこと、ここで映画を撮影しては?」っていうことになりました。

──その展覧会タイトルは「CINEMATIZE シネマタイズ」(高松市美術館 22016年7月16日から9月4日)。この映画を撮影することを前提として構成された展覧会だった?

「シネマタイズ」というのは翻訳すれば「映画化」ですが、映画自体も自分の作品のなかに作り込もうとしたんです。僕の今までの旧作を並べて、映画に登場する建造物もインスタレーションとして組み立てて、僕の作品が物語を紡いでゆく。そういう構造体になっていて。僕自身の芸術と作品とが映画のなかにストーリーを編み込んでゆくような構造の展示を作ったわけです。

──ヤノベさんの作品が「出演」していますが、なかでも制御できない発電所の心臓のように現れる「黒い太陽」という作品が印象的でした。

これは映画と別の話になるんですが、僕の作品にはキャラ立ちしたものが多いけれど、「サン・チャイルド」も「シップス・キャット」も、見せる場所やテーマによってキャラクターを変えてゆく、ある意味、役者のような存在ですね。僕がプロダクションの社長でこの番組ならこのプロジェクト、この展覧会ならこの作品、というかたちで自分の作品をキャスティングしているふしも、ある(笑)。

「黒い太陽」(2009年)はそのなかでも特に、いろんな見えかたをする。最近ではウイルスや微生物に見えるかもしれません。永瀬正敏に匹敵するような、役の振り幅が広い芸達者な作品かもしれません。

──撮影のご苦労も多かったのでは?

いや、楽しかったですよ。美術館のなかで映画を撮影するっていうこと自体、いままでなかったパフォーマンス、表現手段でしたし。美術展に来たら、いきなり「本番はじめまーす、アクション!」(笑)とやっていて、観客は面食らったと思います。撮影した映像は、美術館内のモニタで見られるようになっていて、地元の子どもが、毎日観に来てました。ぼくも現場にずっといて、小道具などを作りましたし。

 ◇ ◇

京都芸術センター主催で開催中のオンライン茶会「光冠茶会」に、「黒い太陽」が出演(?)する。モバイルハウスとして機能する「黒い太陽」を茶室に見立て、ヤノベケンジが席主となる『渡月茶会-2021年宇宙の旅』は3月20日におこなわれる。詳しくは

取材・文/沢田眉香子 写真/木村正史

(Lmaga.jp)

関連ニュース

編集者のオススメ記事

関西最新ニュース

もっとみる

    主要ニュース

    ランキング(芸能)

    話題の写真ランキング

    デイリーおすすめアイテム

    写真

    リアルタイムランキング

    注目トピックス