新たな伝説へ。宝塚『エリザベート』25周年の豪華ガラ・コンサート開幕
『エリザベート』の宝塚歌劇団初演から25年目を迎え、歴代の出演者が多数そろう『エリザベート TAKARAZUKA25周年スペシャル・ガラ・コンサート』が、4月5日に「梅田芸術劇場メインホール」(大阪市北区)で開幕した。
5年ぶりの開催となった同コンサート。さまざまなバージョンが用意されているなか、初日は役をイメージした衣装を着け、本編どおりに歌い継ぐ「アニヴァーサリー25周年バージョン」。元トップスター7人のトートが登場する、ひと際豪華な回だった。
冒頭では、初演の『エリザベート』を大成功に導いた一路真輝と花總まりがスクリーンに登場し、25周年の感慨を述べた。一路が「トートはひと言でいうと、宝塚の男役の美学そのものだった」と話した通り、初日の7人のトートから、黄泉の帝王「死」を演じるうえでのあらゆる表現が、男役の魅力に直結していることを実感させる。
ビブラートをきかせた妖しく深い歌声で「愛と死の輪舞」を聴かせる春野寿美礼トート。ロックスターばりの押し出しで「最後のダンス」を歌い踊る瀬奈じゅんトート。ロングヘアの鬘をなびかせ、「ミルク」で民衆たちをカリスマ的に扇動する姿月あさとトート。
1幕でその3人のトートに絡んだのが、蘭乃はな、実咲凜音、愛希れいかのエリザベート。場面が進むごとにフランツの演者も代わっていくので釘付けとなるが、実咲エリザベート×和央ようかフランツの、世代を超えた宙組トップの組み合わせ、さらに愛希が入団前から憧れていた姿月トートを前に堂々と「鏡の間」の場面を演じるなど、コンサートならではの夢の競演が繰り広げられた。
どこか神聖な、張り詰めた緊迫感のなかで終わった1幕の空気を、ガラっと変えたのが、2幕からルキーニで登場した瀬奈。観客に向かって「タカラジェンヌはいくつになってもライトと手拍子と拍手が大好物です!」と話しかけ、軽快なナンバー「キッチュ」を盛り上げる。
さらに今コンサート初参加の朝夏まなとがシャープな動きも交えたトートで「私が踊る時」を、麻路さきがゾクッとするような包容力で大鳥れいのエリザベートを死へと導こうとし、攻めのメイクをほどこした美しい彩輝なおのトートが、ナイーブな声色の大空ゆうひルドルフと「闇が広がる」を聴かせる。
気品あふれる白城あやかのエリザベートと意気消沈したえまおゆう演じるルドルフ、母と息子の繊細な気質を歌で交わし合う場面には心が張り裂けそうになる。さらに水夏希演じるトートがセット奥からセリ上がり、両手を広げただけで鋭い光線を放つと、死への強い誘惑に思わず共感。
さらに白羽ゆりのエリザベートが彩吹真央のフランツと交わすナンバー「夜のボート」は、すれ違う夫婦の哀しみが湖の底に沈んでいくようで涙を誘う。北翔海莉のフランツも2幕で登場したが、1幕での稔幸や初風緑のフランツ同様、品格と威厳ある歌声が見事だった。
そうして水トートの腕に包まれ、昇天していった白羽エリザベート。こうして書き連ねていても、あまりに豪華なキャストのブレンドに脳内がグルグルしてくるが、実際に観劇しているとナンバーに沿って感情が自然と流れてゆき、物語の深部へ着地。最後は四半世紀を迎えた『エリザベート』の伝説そのものを目撃したような感動に包まれた。
何度もショーストッパー的な拍手が沸き起こり、カーテンコールも熱い拍手が続く。キャストを代表して麻路が、「出演者、スタッフ一同、コロナの感染に十分注意しつつ、千秋楽まで乗り切ろうと頑張っています」と挨拶し、全員が強い決意で臨んでいることが伝わってきた。なお、この初日の公演は9月に発売予定の公演DVDに全編収録される。
大阪公演は4月11日まで。4月17日~5月5日まで「東急シアターオーブ」でも上演。また、4月7日17時公演のライブ配信を皮切りに、3公演のライブ・ビューイング、6公演のライブ配信がおこなわれる。詳細は公式サイトへ。
取材・文/小野寺亜紀
(Lmaga.jp)