若葉竜也の初映画主演作、今泉力哉監督「これからって役者さんばかりだった」

『愛がなんだ』など、青春群像劇の名手と名高い今泉力哉監督による映画『街の上で』。本来であれば2020年春に公開予定だったが、コロナ禍によって延期となり、1年越しの4月9日に公開される。

主役を演じるのは、映画初主演となる俳優・若葉竜也。NHK連続テレビ小説『おちょやん』に出演するなど、活動の場を飛躍的に広げている注目の存在だ。また、今後の活躍が期待される、穂志もえか、古川琴音、萩原みのり、中田青渚のほか、成田凌が友情出演している。

下北沢の古着屋で働く主人公・荒川青が過ごす、彼女と別れたあとの何気ない日常。そんななか依頼された「自主映画への出演」で、出会った女性たちとの絶妙な人間関係が描かれていく。同作について、今泉監督とも親交が深い映画評論家・ミルクマン斉藤が話を訊いた(一部ネタバレあり)。

取材・文/ミルクマン斉藤

「『ロメール好きでしょ?』とか言われて、観るようになった」──(監督が手にするチラシに目をやり)あ、監督、エリック・ロメール『六つの教訓話』特集のチラシ見てるんですか?

いや、ちょっと気になって。ロメールの映画って、どれもタイトルがいいなと思って。新作のタイトルをずっと迷っているんですよね。

──ほとんど直訳なんだけど、いいですよね。でも『街の上で』って、女の子のちりばめ方がちょっとロメールっぽいかなと。

このチラシで『モンソーのパン屋の女の子』を思い出して、この系譜にあるなと思いました。『飛行士の妻』とか改めて観たら、我ながら『街の上で』は絶対に影響受けてるな、と。

──『街の上で』はいちおう若葉竜也さんと4人の女性の話、ってことになってるけど、ホントはそれだけじゃないですよね。ほかにも点的に現れる女性が何人か出てきて、その女性もハワード・ホークス風にみんな魅力的だという。どの女性がメインの4人なのか、見進めないと分からない(笑)。

そうですねぇ、意図的ですけれども。ライヴハウスの女性とかもヒロインぽく撮ってその場限りとか。逆に古着屋のめんどくさいカップルみたいに、それで終わりだよな、ってのをもう1回出すとか(笑)。

──そうしたリフレインとか、はぐらかし方とかも含めて、きっとロメール好きなんだろうなというのは、今までの作品からも感じてきたんですけども。

でも、昔は本当に全然観てなくて。デビューした頃、人から言われて観るようになったんです。「ロメール好きでしょ?」とか「似てるよね」とか言われて。実際観たらあまりにすごかったから、恐れ多くて。「全然、似てないわ。俺、できてないわ」と思いました。

そういえば『第71回ベルリン国際映画祭』で銀熊賞を受賞した濱口竜介さんの新作『偶然と想像』も構成がロメールっぽいですよね。

──あれに古川琴音さん出てますよね。

彼女の活躍、すごいですよねぇ。

──4月からのドラマ『コントが始まる』のCMに、菅田将暉、有村架純、仲野太賀、神木隆之介ってメンツと同じ並びでどどーんと出たんでびっくりしましたよ。それも含めてこの『街の上で』、コロナのせいで公開が1年延びた間に、出ている俳優陣の知名度の上昇ぷりが尋常じゃない。

若葉さんもねえ、ほんとに。

──うんうん、今や朝ドラ俳優。『おちょやん』からいったん消えたときには「若葉ロス」とか言われちゃって。成田凌さんなんて、その『おちょやん』のW主演じゃないですか。まさにこの作品の「朝ドラ俳優」という設定そのままに(笑)。『街の上で』を撮ってるときはまだ決まってなかったんでしょ?

今のは決まってなかったけど、成田さんは前にも朝ドラ出てたんで。

──そうでしたっけ?・・・あ、『わろてんか』の葵わかなのひとり息子か。

はい、1回出てたんですよ。成田に関してはネタとして当て書きして。役名も「成田凌」でやらせようとしてたくらい(笑)。でも「間宮」って名にしたんですね。

山戸結希さんの映画『ホットギミック ガールミーツボーイ』(2019年)で、成田さんと仲のいい間宮祥太朗さんが演じた役が「成田凌」だったんですよ、読みは「なりた しのぐ」だったんですけど。それで今回は間宮を演じさせようみたいな。成田さんは嫌がってはないけど、「もぉ~」みたいな感じでした(笑)。

──あ、それは気づかなかった。でも穂志もえかさんも、コロナ禍のなかで撮られた岩井俊二監督の『8日間で死んだ怪獣の12日間の物語』でメチャ印象的なYouTuber役やっててMVまで撮ってるし、萩原みのりさんなんてそれこそメチャクチャ映画に出てますもん。

今度、主演ドラマも決まってますね(ABCテレビ『RISKY』)。

──ある意味、この映画の中心的女性といってもいい中田清渚さんも、監督は最新作『あの頃。』で再度起用されてますしね。

そうです。『街の上で』の中田さんは想像より魅力的になりました。長回しを含め、中心というか、一番謎な人にはなっていますね。行動原理もですけど。

「『今泉映画経由朝ドラ』みたいになったらうれしいな」──この映画、すべてのシーンが面白いと言えば面白いんですけれども「これはちょっとものすごいものを見ているな」と3分くらい経って思うのが、荒川青と城定イハ(中田青渚)の15分くらいのほぼフィクスの長回しシーンです。あれは最初から意図されて?

決めていたわけではないんです。物理的な事情も含めてなんですけども、その日の現場が驚くほど押してて。

『パンとバスと2度目のハツコイ』とか『愛がなんだ』とか今まで何本か撮ってきた状況下で、結構重要な2人だけのシーンを1カットで見せるみたいなことをしてきてたんです。そこに引っ張られている自分もいつつ、ただ芝居が成り立たなければカットを割るしかないし(笑)。

正直、段取り、テストも、最後までは1回も上手くいかなくて、仕方なく「そろそろ撮りますか」って。で、あれは本番1回だけなんです。なんかあの空気が撮れちゃったら、もう俺がハサミを入れる意味はないな、と。

──でも10分くらい続いたところで、川瀬雪(穂志もえか)の部屋のシーンが挟まれますよね。それはそれで衝撃の展開なんだけど。

まあ、長回し中にちょっと芝居をトチったところがあって。でもカメラの裏から、俺が台詞をこそっと言ってあげて、止めずに撮り続けた。もともと雪たちのシーンは、あの長回しのくだりが終わったあとに置くはずだったんです。

映画にも残ってますけど、イハが「おやすみ」って去ったあと、青が部屋の隅っこに行って携帯いじってるでしょ。あれは携帯で「今日、実は間宮さんに会ったよ」ってメールを送ってるんですよ。本当はメール繋がりであっちに行く流れだった。でも、今の完成版も繋がりはいいですよね。

──脚本として、あの2人のやりとりは出来てたんですよね?

そうです。アドリブではなくて台詞は書いてるんだけど、2人が台詞と台詞の間で笑ってたり、照れてるみたいになってる時間というのは俺はコントロールしていないので、脚本を芝居で上げてもらってますね。ま、何をもってアドリブというのか、だとは思うんですけど。

自分で書いておきながら「終わんね~。なにこれ、大丈夫?」みたいなことを段取り中に現場で感じてて。脚本めくってもめくって終わらない。これヤバいぞ、って思ったけど、焦ることもなくただ撮ってましたね。

──そもそもあのお2人、もうボケツッコミができてるじゃないですか。何分続こうがまったく退屈しない心地よさがある。監督もお笑い好きですもんね。

ああ、そうかも。あと、イハのしゃべりを関西弁にしたりというのもありますよね。

──それがいちばん大きいかなあ。初めは標準語だったんですか?

書いてるときは標準語でしたね。それで中田さんが演るって決まってから、2人の時間作って。そのときにやっぱ関西弁でやった方がいいかも、と。「これ関西弁で書けない?」って、中田さんに校正してもらって作っていったんです。

それから若葉さんとの本読みに入ったんですけど、俺がそれをちゃんと彼に伝えてなかったっぽくって。そしたら「台本は標準語で書いてあるのに、勝手に関西弁で演じる女優がいる」って若葉さんがいろんな取材の場で言っちゃって。「中田青渚はヤバいですよ。宇宙人です」とか(笑)。

──あはは。まあ、あれだけのやりとりをやってのけた若葉さんなりの親密感の表現なんでしょうけど。

「今泉さん、あれ関西弁で、って指示してたの? いろんなところで言っちゃった」って(笑)。逆に中田さんは中田さんで、「関西弁っていうのは相手との距離が近くなるから、なるべく言葉を雑に投げて、なるべく距離感が近すぎないように、恋愛っぽく見えないように意識してました」って言ってて、すごいなあと。確かに言葉がぶっきらぼうなんですよ。

──中田さんにとっても、あれだけバリバリの関西弁で演じられたことはなかったでしょ?

彼女が出演する、ふくだももこさんの『君が世界のはじまり』(2020年)よりも前に撮ってました。だから、ある程度どんと大きい役というのもまだやってなかったから、こっちもキャスティングするときに、「結構チャレンジだよね」って、プロデューサーと言ってたんです。

中田さんとはドラマ版の『his』(2019年)のオーディションでお会いしてて、配役のバランスで外しちゃったんですけど、そのときの芝居もメチャメチャ面白かった。そしたらプロデューサーの髭野さんがすでに仕事してて「中田さんにイチかバチか頼って裏切られたことないですよ、全部上手くいってます」って言われて、じゃあ中田さんと心中だぁと。

例えばちょい役のかわいい子みたいなポジションは今後商業映画でいっぱい来るだろうし、そういう使い方をこの映画でする必要はないよねって。やるならガッツリかな、と。

──でも、中田さんはこれですごく注目されるのは間違いないですね。

それが、コロナで公開が1年延びてしまった。中田さんだけでなくて、本当にこれからって役者さんが沢山いたから、2020年に公開してたらみんなそのあとの仕事いっぱい来たかな、って思いがあったんです。けれど、いやいや全然活躍してる、っていう(笑)。

──まあ、僕も含め映像関係者は、去年の公開予定日前に大方観てただろうしね。『お嬢ちゃん』や『37セカンズ』で大きな役を演ってた萩原みのりさんはともかく、あとの3人は知ってはいたけれどもまだ全然でしたし。この映画を観たからこそ、この1年の間で起用されたというのは絶対にあると思うんだけど。

そうだとしたら、とってもありがたいです。

──でも成田さんの「朝ドラ役者」は今の方がウケますよね(笑)。

こんなタイミングよく?みたいな。前の『愛がなんだ』の公開のときもちょうど『まんぷく』が放送してて、岸井ゆきのさんと深川麻衣さんが出てた。ドラマ3月終わりで映画4月公開で、「朝ドラが宣伝に使えるみたいなことがあるの?」みたいなこと冗談で言ってたのに、また同じことが若葉さんと成田さんとで起きてるから、「NHKの人ありがとう」みたいな(笑)。

──古川琴音さんは『エール』に出てましたもんね。だからドラマのキャスティング・ディレクターはみんな今泉映画を注目して観てるんじゃないのかな?

そうなんですかね。「今泉映画経由朝ドラ」みたいな(笑)。そうなったら、うれしいですね。

「距離感は、勝手になるようになるって思ってます」──それはともかく、『街の上で』は青くんにこれだけの女性が絡んでくるのに、ま、雪は別として、ロメール映画みたいに肉体関係になったりしないっていう。性欲が薄い草食系では決してないしね、彼は。

そのへんは俺の温度かもしれないですね。でも、その空気とか期待だけはみんな持っていたりする。青もずっと別れた雪のことを引きずってるけど、どこか淡い期待みたいなのは持っていて。けれど、雪以外の女性といざそういうことになったら雪のことを思って自分から断るかもしれない。

──長回しシーンになる前の、イハの部屋で白い布を広げるという謎な時間も、なんかドキドキするんですよね。

クランクイン前の脚本には確かなかったシーンです。そんななか、撮影中に差し込みの脚本を書いて。「ちょっとでっかい白い布、用意してもらっていいですか? シーツ、2、3枚くらいの大きさの」って美術部にお願いしたら用意してくれました。

「え? 意味が分からない」と言われてもおかしくないのに。あれ、説明のしようもないし。ただ布を広げたかっただけ。

──テーブルの上で広げたときに、青が「お茶、危ない!」って(笑)。

撮影前の段取りのときに若葉さんがそれ言ったんですよ。めっちゃリアルだし、言葉も面白いと思ったので、イハに「あ、実際もお茶の上なんで」って台詞を俺が足しました。

高橋町子(萩原みのり)が監督してる映画って、喫茶店で本を読んでるシーン以外どんなのか分からないですけど、なんかあの喫茶店でデカい布が広げられる時間があるんだなと。お茶やコーヒーの上で(笑)。

──でもテーブルを隔てて2人がばっと白い布を広げるってのは、その後のセクシャルな時間を予感はさせるんですよね。

試写で見てくれたはるな愛さんが、「あの2人がセックスするかどうかは分からないけど、距離が一番近づける瞬間はあの布だったじゃん!」っておっしゃってて。「布広げたのになんもないんかい!」って(笑)。

──分かる、とっても分かる。そのあとあれだけ赤裸々な恋バナをするわけですし。

だからそれも、嫉妬とか恋愛感情がないから話せる距離もある。近づくと話せなくなる・・・みたいなのは自分の経験でもありますね。なんか分かんないんですよね、俺も。イハはどういう気持ちだったのかなぁとか。

どのタイミングで恋愛感情とか、友人の距離が詰まってるのかとかは役者にも言ってないですし、勝手になるようになるって思ってます。

──今泉さんの映画って、そのあたりをはっきりさせないのが通常運転ですもんね。

そうです。答えはないですね。俺も驚きたいし。

──青のほうも「好きでもない異性とは恋人関係に普通なんないでしょう」なんて言っちゃう人ですからね(笑)。

恋愛経験を極端に少なくしたんで。雪が初めての彼女くらいの勢いにしてるので、そこのリアリズムは保ててるかなと。

──そうなんですよね。雪にフラれた日のケーキをまだ冷蔵庫に残してるようなやつだから。

あれもね、脚本にはもともとなくて、結構撮影が始まってから差し込みました。助監督はみんな男性だったんですけど、2度目のケーキのシーン、みんなあんまり理解してくれなくて(笑)。これのどこがぐっとくるのか分からないと言われて、「絶対大丈夫」って言って撮ったんですけど。

──でも去年初めて拝見させていただいたときの僕のメモを改めて見たんですけど、フラれるところで「あ、このケーキどうすんのかな?」って書いてる。で、あとから出てきて「ほら。やっぱり」って(笑)。

ホントですか? それはすごい。さすがです。

──青って、ライヴハウスの謎の女からもらったメンソール煙草をずっと吸わずにPCの前に残しているわけですよね。もらった、といってもまったくの他人から彼女がもらい煙草したものを押し付けられたような感じですが、あ、やっぱそんな男なのね、って(笑)。

この映画のラストシーンを、実はもうひとつ現場で書いていて。結局、今のラストが撮れて「あ、これはもうバッチリ」ってなったから撮らなかったんですけど。

その幻のラストって、あの煙草を雪が見つけて、青が「実はよく知らない女の人からもらって。いや、女の人じゃなくて男の人からもらって。いや、違うな、男の人から女の人がもらって、それをもらって」って本当のことを言うだけなのに、しどろもどろになって、雪から「いいよ、嘘つかなくて」と言われるっていう。

映画を見てる人は事実を知ってるから、青は嘘をついていないのが分かるけど、雪は「そんなこと起きないから。何嘘ついてるの」みたいな感じで揉めるっていう。

──ちょっと青には女難の相がありますね(笑)。その前のシーンで、映画の披露上映のあと、イハが青の店に訪れて秋波を送るというか、明らかに「好きよ」と言う空気を流してみせるというのもありますしね。

そうですね。あれも脚本に明確に書かれていたわけじゃなくて。目線を送るか送らないかだけじゃないですか。最後、分かりやすく目線を送ってるけど。なんかどんどん現場の感覚でやってましたね。

「映画に出てましたよ」とか言っちゃう。謎の意味深感。あのシーンの台詞のやりとりがオンじゃなく裏なの、けっこうこだわってやってますね。しゃべってる人じゃなく聞いてる人、リアクション側でみせていく。

そうすると感情が立ち上がるんですよね。まあ、イハに限らず、男女の距離感はみんなあやふやにしてました。

「漫画家・大橋裕之さんのエッセンスを与えてもらった」──今泉監督の映画って、各登場人物の距離感が微妙に食い違ったり、遠のいたり近づいたりするというのが基本にありますよね。その塩梅がこの『街の上で』は、ちょっと恐ろしいくらいに上手くいってるような気が。

今回はどこから作っていこうとかあまり決めずにパーツパーツで発想していきました。もともと、彼女にフラれた男が彼女のことを引きずってて、ただ過ごしているうちにいろんな女性に出会っていく・・・みたいなのはあったんですが。

あと、さっきの煙草もそうですし、本に挟まれたメモや留守電に残る声とかもそうなんですけど、すごく意図的なことでなくて何ならちょっと忘れてるくらいになってたことが遅れて届くとか、そういうのに興味があったんでしょうね。

──青の昔のカセットテープとかね。

そうですね。テープはあるけどデッキがないとか。どっか欠けてる。なにか足りない。

──青のなかにどれだけあの煙草を残してた理由があるかも分かんないですしね。それにしてもさきほどの幻のラストシーン、登場人物たちが路上で出会って揉めに揉めていく爆笑シーンと呼応するようで。

あそこの撮影、実はなかなか上手くいかなくて、メッチャ時間がかかりました。しかも撮影最終日だったんですけど、あの日だけ灼熱の温度になって、35度とかあったのかな? 地獄で、みんな頭が回らないし、あんな掛け合いなんて1歩ズレたら全く面白くなくなるし。

段取りやっても全然面白くならなくて、脚本が悪いのかな、みたいにドツボにはまって。ちょっとあそこは怖かったなぁ。

──あのシーンってどっちかというとハリウッド的な昔のスクリューボール・コメディの、もつれにもつれた末、いささか不条理な状況にまで至る狂騒的クライマックスみたいな感じがちょっとありますよね。

構成としては初期に作った『サッドティー』や『こっぴどい猫』とかと一緒で、群像劇はとりあえず全員集合させたら終われる、ってところがあって。ずるい考えですが(笑)。

揉めてる途中段階で雪がとつぜん「1回殴られました」みたいなことを言うんですけど、ワケ分かんなくて好きで(笑)。ああいう台詞、書けたときにうれしくなるんですよ。『愛がなんだ』の「よし、パスタ作る」ってとこと同じで、なんで今この流れで殴られた話なんか出てくるんだっていう。

そういうのが書けたときに、ここは上手いこといったなみたいな。思いつくかどうかだけなんですけど。

──今回、漫画家の大橋裕之さんと脚本を共作されてますが、どういったやりかたで?

もちろん俺は大橋さんの作品が好きなんですけれど、同時に脚本を書くというのは無理があったので、結果的には会ってお話をしたり、俺が書いたやつを読んでもらって意見してもらったりを繰り返していた感じですね。

大橋さんのエッセンスを与えてもらった、って感じです。さっきの路上の揉め事もそうだけど、俺がひとりでやっていたらちょっとコントとか笑いにいきすぎてビビって切ってしまっていたかもしれないのを、大橋さんが「ここ残さないともったいないよ」って。

──会話と心理がぐちゃぐちゃになって。

途中で、ある男が自転車でやって来るのも大橋さんのアイディアです。大橋さんはあそこに警察もやってくるのはどう? って言ってたけど、それは集まりすぎ(笑)って俺がブレーキかけて。そんな話し合いをあちこちのシーンにおいてしました。

──でも、その異物である自転車もちゃんと上手く活かされている。しかも急な坂道が前にあって、何故か雪が自転車奪って颯爽と走り去ろうとするとコケそうになって押して上がる、とか。最高ですよね、あれ。

あれは偶然。ほかの監督ならあれを良しとできないかも、って思いながら作っていました。穂志さんが乗れなかったからってだけで、コントロールして作ってない。追っかけられるかもってリアリティで作っていくよりも、ダサくて面白いから本番もそれでいいよ、って。

──なんだかこの1年間で、映画界に期せずして大橋裕之ブームみたいなものが。

アニメーションの『音楽』(2020年)があってね、(竹中直人・山田孝之・齊藤工共同監督の)『ゾッキ』(2021年4月2日公開)もあるし。

──この間、『大阪アジアン映画祭』で上映された中村祐太郎監督の新作『新しい風』のポスターも大橋さんが描いてるし。今まで山下敦弘さんを除いては、映画界からほとんどコミットメントされてなかったのに。

でも僕のなかにはずっとあるんですけどね、大橋さん。ずっといる気はする。

(Lmaga.jp)

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