歌舞伎を「次の人たちに渡すこと」、中村勘九郎&七之助の旅路
来年の大河ドラマ『どうする家康』の出演が決まった中村勘九郎と、その弟で、歌舞伎界を代表する女形の一人でもある中村七之助。この2人が率いる「中村屋」一門が、全国を回る歌舞伎舞踊公演『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』が開催される。そのリモート取材会がおこなわれ、勘九郎と七之助の2人が、最近の歌舞伎界について、心境を語った。
■ コロナ禍を経て、歌舞伎のかけ声「大向う」が復活?
2022年は、中村屋の名物となっている、仮設の芝居小屋での公演「平成中村座」の公演を復活させるなど、少しずつコロナ禍以前の状況に戻りつつあることを実感しているという2人。七之助は平成中村座について「コロナ禍では1番厳しいと思っていた(公演形態の)中村座が無事にやれたので、お客さまの感じもどんどん普通になってくるんじゃないかな」と希望を語った。
また勘九郎も「(東京で公演中の)市川團十郎襲名では大向うが復活して、客席が盛り上がってきました」と、最近自粛が続いていた「○○屋!」という大向うの声が戻ってきたことを喜んでいる。
「大向うがないことに慣れはじめていたけど、やっぱり客席から声がかかる演劇なんて、ほかのどこを見渡してもないですからね。歌舞伎独特の演出法というか、楽しみ方の1つなので。これからもどんどん解禁になってくれたら」と言いつつも「今回の僕らの巡業は(大向うは)難しいかもしれません」と残念そうに語った。
■ 後輩には「ぶつけまくってほしい、出る杭は打ちません」
父・中村勘三郎が2012年に逝去したあと、若くして中村屋一門を引き継いで駆け抜けてきた2兄弟も、今は20代の若手たちを引っ張り上げていく立場に。これに対し勘九郎は「出る杭は打つ(笑)」と冗談を言いつつも「歌舞伎が大切なのは、先輩の教えや先人たちの思いを受け継いで、次の人たちに渡すこと。それが僕らの使命です」と、歌舞伎俳優ならではの思いを打ち明ける。
そして七之助は、とくに中村屋期待の若手・中村鶴松の名前を上げて「彼はコロナがはじまった頃、半年以上舞台に出演できませんでした。いろんなものを吸収できるときに舞台に立てない苦しさは、僕たちの100倍はあったと思う。それを今後はぶつけまくってほしいし、いろんなことを吸収してほしい」と後輩たちを気づかったうえで「出る杭は打ちません。どんどん出てきて、早く私たちが楽できるようにしてほしいです(笑)」と、明るく答えた。
『中村勘九郎 中村七之助 春暁特別公演2023』は、3月6日の東京公演を皮切りに全国を巡演し、関西では3月15日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)で上演。チケットは9500円で、現在発売中。
また12月23日放映のTVドキュメンタリー番組『密着! 中村屋ファミリー 浅草に平成中村座が完全復活! 歓喜と熱狂の大舞台SP』(CX系列)では、平成中村座公演をはじめとする、勘九郎・七之助たちの2022年の軌跡が描かれる。
取材・文/吉永美和子
(Lmaga.jp)