25年間探し続けた「理想の俳優」、三谷幸喜が選んだのは?
3度目の大河ドラマの脚本を担当した『鎌倉殿の13人』(NHK)が、最終回を迎えたばかりの脚本家の三谷幸喜。内野聖陽・瀬戸康史の組み合わせで、25年ぶりに再演する2人芝居『笑の大学』のリモート会見がおこなわれ、内野と瀬戸の魅力について語った。
■ 「俳優がそろわない限り、上演したくない」検閲が厳しくなった戦前の日本を舞台に、喜劇作家・椿(瀬戸)と、警視庁検察官・向坂(さきさか/内野)が、椿の新作喜劇の上演をめぐって、激しくも愉快な攻防を繰り広げる本作。1996年の初演以降、映画化や海外翻訳上演もされるほど高く評価されているにも関わらず、1998年の再演を最後に、長らく封印状態にあった幻の名作だ。
これまで上演がされてこなかった背景について、三谷は「椿は僕の理想というか、こんな仕事の仕方をしたいという存在。すごく愛着のある大事な作品なので、本当にこの作品を託したいと思う俳優が2人そろわない限り、上演したくない・・・と思った結果、25年も空いちゃいました」と、思い入れの深さゆえに、上演に慎重になっていたと語る。
■ 「内野さんと瀬戸さんの新しい代表作になるようにしたい」そうして選ばれたのが、映像・舞台の両方で三谷作品の出演経験がある、内野聖陽と瀬戸康史。まず三谷は内野について「内面のあたたかさと、表面的なクールさを兼ね備えた俳優さん」と評する。
「大河ドラマの『真田丸』で徳川家康をやってくださったんですが、なんの話もしていないのに、見事に僕がやってほしい家康を最後までやりとげてくださって、すごい人だと思いました」と語ったうえで「僕の思いと内野さんの思いは、きっと似ていると感じていたので、彼の向坂(役)をすごく観てみたいと思いました」と、オファーの理由を語った。
対する瀬戸康史は、『鎌倉殿の13人』で、武家らしからぬ愛嬌にあふれた「トキューサ」こと北条時房役で毎週SNSを沸かしていたのが、記憶に新しいところ。三谷が椿役に彼を指名したのも、この愛嬌にあったそうだ。
「芸人さんの世界では、舞台に出た瞬間についみんなが笑っちゃうとか、穏やかな気持ちになる人のことを『フラがある』と言うらしいんです。瀬戸さんも舞台に出た瞬間に空気が変わる、フラを持ってらっしゃる方」と語り、さらに「僕が演出した『23階の笑い』で演じた喜劇作家の姿が、昔の自分とかぶった」のも決め手になったと明かした。
脚本の改訂については「初演のとき(映画監督の)伊丹十三さんに『この作品はすでに古典になっているね』とおっしゃっていただいたのがとてもうれしかったので、変にいじらない方がいい」と述べる一方で「2人に合わせて、稽古をしながら微調整していく部分は当然あると思う。内野さんと瀬戸さんの新しい代表作になるようにしたいです」と、令和版の新たなステージを作り上げることを誓った。
『笑の大学』は、2月の東京公演を経て、大阪では3月23日~26日に「サンケイホールブリーゼ」(大阪市北区)で、兵庫では4月13日~16日に「兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール」(兵庫県西宮市)にて上演。チケットは1万円で、2月26日に発売開始。
取材・文/吉永美和子
(Lmaga.jp)