「強い香りをまとったまま来ないで」…大阪にある洋菓子店の叫びに反響、匂い問題の難しさ
「当店は飲食物を扱う店なので、香水・柔軟剤などの匂いのきつい方の入店はお断りします」という張り紙をした洋菓子店のX(ツイッター)への投稿(現在は削除済み)に、多くの人が注目し議論に。香りに対するさまざまな価値観が浮きぼりとなった。
投稿したのは大阪・塚本にある洋菓子店「シュクルリ」(大阪市西淀川区)の店主・井藤さん。以前から、月に数人ほど香水や柔軟剤、汗拭きシートなど、匂いがきつい人が来店することがあり、そのたびにどうすべきか悩んでいたという。
実際に世間一般、特に寿司店や料亭では、香水などを付けた人の来店を断る店も多い。それほど匂いは味覚に大きく影響するからこその対応だ。
「匂いがきつい方が来店されると、小さい店なのでそこそこ長い時間残るんです。そういった方が来店された後、匂いを取るのがすごく大変で」と、店主の井藤さん。
「でもそういった、匂いがキツい方のご来店を断っていいのかな? とみなさんの意見が気になり、つぶやいたところ、『断っていいと思う』と肯定的な意見をいただき、今回張り紙を貼ることに。以前は完全テイクアウト専門店だったのですが、今年の7月からちょっとしたイートインも始めたのもあって、そうさせてもらいました」。
自分の店と来店される多くのお客を守るためだからこそ、起こした行動だ。
■ 「正しく伝わらなかった…」匂い問題の難しさしかし、問題はそれだけでなかった。
「1番はじめに『匂いのキツい方お断りします』という内容を呟いたとき、柔軟剤や香水の匂いで気分が悪くなるという方たちから、すごく賞賛されました。でも僕自身は適度であれば香水や柔軟剤の香りは好きですし、柔軟剤も使っています。その旨を呟いた途端に、匂いに敏感な方たちから、『がっかりしました』『この店あかんわ』などと否定的な内容のリプライやDMもたくさん届きました」と井藤さん。
なかには攻撃的な内容のものもあったそうで、自身が伝えたい内容が正しく伝わらなかったこともあり、その投稿は消去したという。
「僕が1番伝えたかったのは、食べ物の味や香りを邪魔するものを否定しているだけであって、飲食店を訪れる際には気をつけてもらえたらうれしいということ。それだけです。ほかの人の匂いを攻撃したいわけじゃない。匂いを攻撃の材料にするのは実生活でもSNSでも辞めて欲しい」と続ける。
自分では自分の匂いが分からないことも多く、またデリケートな内容だけに指摘される機会もほとんどないかもしれない。だからこそ少しでも周りに配慮できるよう、飲食店を訪れる際は香水を付けない、香りのある柔軟剤の使用を控えるなど、気をつけたい。
また、匂いの好みは人それぞれ。自分が嫌いだからと言って、他人を攻撃して良い理由にはならない。 非常にデリケートな問題だからこそ、香りを纏うことが好きな人も、苦手な人も、自分以外の人の存在を常に頭の片隅に置いておきたい。
取材・文・写真/野村真帆
(Lmaga.jp)