眠りについた「不夜城」に明かりが灯る7日間 兵庫県朝来市でデジタルアートイベント開催

1987年に閉山した明延鉱山の選鉱施設として、日本の産業発展を支えた「神子畑選鉱場」(兵庫県朝来市)。その大規模な遺構を舞台に、かつての姿を呼び起こすデジタルアートイベント『DK Live in 神子畑』が、11月11日から7日間開催される。

■ 廃墟マニアの間で話題、人気スポットに「奈良の大仏さん」鋳造のために銅を献上したとの言い伝えが残る、明延鉱山で採掘された金、銀、銅、鉛、スズなどの鉱石を選別するため、1919年に稼働を開始した「神子畑選鉱場」。

その規模は東洋一を誇り、トロッコ電車で運びこまれる鉱石を24時間不眠不休で選別していた。深夜も絶えず明かりが灯る姿から「不夜城」と呼ばれ繁栄を誇ったが、円高の影響で海外製品との競争力を失い、1987年に鉱山とともに閉鎖された。

以来、山あいの町で静かに眠る姿が廃墟マニアの間で密かな話題に。2004年には建屋が解体されたが、斜面に残ったコンクリートの基礎や、キャラクターグッズにもなり人気を呼んでいるろ過装置「シックナー」などが、産業発展の歴史を物語る遺産として広く知られるようになった。今では、地元ボランティアによるガイドも評判を呼び、観光バスがつぎつぎとやってくる人気スポットとなっている。

■ 「心のままに感じてもらいたい」その「神子畑選鉱場」にふたたび明かりを灯そうと、『DK Live in 神子畑』を企画したのは「ヘリタビ推進協議会」。プロジェクションマッピングの元祖ともいわれ、世界各地でインスタレーション・アートを展開する長谷川章氏による「デジタル掛け軸」(DK)が夜の神子畑選鉱場跡を彩る。

およそ100万枚ものデジタルアート画像をランダムで投影する『DK Live』。大規模な建造物をスクリーンに重なりあう模様が、流れる水のようにかたちを変え、瞬間瞬間の美しさと儚さを見ることができる。

「デジタル掛け軸」の第一人者であり、世界的アーティストの長谷川氏。実は石川県小松市にあった「尾小屋鉱山」の元技師を父に持つ。長谷川氏にとって鉱山は「私の幼き日の原風景」であり、「神子畑選鉱場」でのインスタレーションについて、「懐かしい風景を見ることができた。見る人にはそれぞれの心のままに感じてもらいたい」と話す。

11日と12日には、前衛書道家の岩坂典子氏によるパフォーマンスや、法延山妙泉寺の副住職で、クリエイティブディレクターとして日本全国でイベント・コンサートの企画・舞台演出を手がける松本智翔氏によるトークイベント、温かい食事や飲み物が楽しめるマルシェイベントなどが開催される。

長い眠りについた「不夜城」にふたたび明かりが灯る7日間。静寂に包まれる夜に、かつてのにぎわいが映し出されることだろう。期間は17日まで。時間は夕方5時から夜9時(一部プログラムは異なる)。

取材・文/脈 脈子

(Lmaga.jp)

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