福来スズ子「さよならコンサート」の裏側、懐かしい面々の“マジ泣き”は「愛されたヒロイン」の証【ブギウギ最終回】

『ブギウギ』(NHK朝ドラ)が3月29日、最終回を迎えた。四十路になり、自分が思う最高のパフォーマンスができなくなったと感じたスズ子(趣里)は、引退を決意。恩師である羽鳥(草彅剛)の提案で「さよならコンサート」を開いて有終の美を飾ることとなった。

羽鳥が作曲した全曲をステージで披露し、スズ子が最後に歌うのは、戦後日本の復興ソングであり、スズ子にとっても再起の歌となった『東京ブギウギ』だ。

全身全霊を『東京ブギウギ』に乗せて、これまでの思いと感謝を観客に伝えるスズ子。客席には懐かしい面々の姿もあり、スズ子を一心に見つめている。直近のエピソードに登場した人たちのほかに、「梅丸少女歌劇団」で同じ釜の飯を食べた秋山(伊原六花)、リリー(清水くるみ)、和希(片山友希)、林(橋本じゅん)、そして橘(翼和希)。

「梅丸楽劇団」で共に過ごした松永(新納慎也)、辛島(安井順平)。公私にわたりスズ子を支えた山下(近藤芳正)と坂口(黒田有)。おミネ(田中麗奈)と夜の女たちもいた。

特に、麻里(市川実和子)、股野(森永悠希)、秋山と和希などは、演技を超越して「マジ泣きなのでは?」と思わされるほどの表情を浮かべていた。この胸いっぱいの「さよならコンサート」の裏側を、制作統括の福岡利武さんに聞いた。

■ 趣里への心からの「お疲れさま」が伝わるコンサートに福岡さんは、「笠置シヅ子さんは引退コンサートをおこなっておらず、福来スズ子の『さよならコンサート』は『ブギウギ』のオリジナル・エピソード。ドラマとして、フィクションとしてしっかり『。』を打つために設けました」と語る。

懐かしい面々も含めた観客席の様子については、「客席にいたみなさんもこのシーンがオールアップだったので『これが最後だ』という思いで感極まっていらっしゃいました。撮影の前後にもみなさんは、趣里さんへの労いの言葉をかけていらしたのですが、スズ子への思いと、座長として頑張ってきた趣里さんへ心からの『お疲れさま』が伝わってきました」と福岡さん。

「みなさんの胸の内にいろんな思いが複雑に入り混じっていたようで、演技を超えた『何か』が感じられました。本当にスズ子というヒロインは愛されていたんだな、そして『ブギウギ』は素敵なキャストのみなさんに恵まれたんだなと改めて思いました」と振りかえった。

■ 実は2パターン作っていた『東京ブギウギ』歌唱シーンまた、生演奏、生歌で収録がおこなわれたという最後の『東京ブギウギ』について、「趣里さんには『最後の歌唱』という思いで、万感を乗せて歌って、演じていただけました。曲の導入はピアノの伴奏だけのアレンジ。これは、音楽を担当していただき、最終回ではステージで指揮棒を振っていただいた服部隆之さんと相談して決めました。いきなり元気に歌うより、ピアノソロから静かにスタートしていくほうが、これまでのスズ子の歌手人生を振りかえるにふさわしいのではないかと」と語った。

最後の『東京ブギウギ』歌唱シーンは、放送されたもののほかにもう1パターン作っていたという。福岡さんはこう説明する。

「実はオンエアされたもの以外に、歌に合わせてこれまでのスズ子の回想を走馬灯のように流すバージョンも編集で作ってみたんです。でもやっぱり、最後はスズ子が歌うところをしっかりと見届けたい、ベタベタ回想するんじゃなくてストレートに『歌』を見せたいということで、ステージの映像をフルで使うことにしました。歌を聴きながら、見ていただいてるみなさんに『ああ、スズ子は今まで頑張ってきたんだな』ということを、少しでも感じていただけたらうれしいです」。

半年間『ブギウギ』を楽しんで見てきた視聴者の脳内ではきっと、『東京ブギウギ』に合わせて自動的にスズ子のこれまで半生の回想が流れたに違いない。

取材・文/佐野華英

(Lmaga.jp)

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