生田斗真×古田新太が「戻る場所」改めて劇団☆新感線を語る

生田斗真が、美しさを武器に世界征服を狙う異色の悪漢を演じる劇団☆新感線の時代劇『バサラオ』。生田にとっては待望の新感線初の悪役であり、また看板俳優・古田新太との、待ちに待った初共演も実現する。生田が17歳で新感線の舞台に出演して以来、古田は生田に目をかけ、生田は古田の芸達者ぶりをリスペクトするという関係を築いていたそう。この機会にお互いの本音や、古田が本当は生田とやりたかった芝居などを、忌憚なく語ってもらった。

取材・文/吉永美和子

写真/バンリ

◆「新感線で描かれる悪の色気には、ずっと憧れがあった」(生田)

──生田さんはこれが5回目の新感線出演となりますが、古田さんとは共演NGが出てるのか? と思うぐらい、同じ作品に出る機会がなかったですね。

古田「はい、NGが出てました」

生田「出してないよ!(一同笑)新感線の公演って年1本、多くて2本だけど、春公演は僕(出演)で、秋公演は古田さん(出演)って感じで、本当に古田さんがいないときだけ呼んでいただいてたので。『古田のいない新感線を頼む!』みたいな思いを託されているのか? と、なかば思ってましたね」

古田「キャラがかぶるからな(笑)。でも新感線に限らず、映像も含めて、お芝居でガッツリ絡むのは、これが初めてです」

──『バサラオ』は南北朝時代の日本を思わせる世界を舞台に、生田さんと中村倫也さんのコンビが、古田さんをはじめとする権力者たちを手玉に取りながら、天下取りを目指すという物語です。生田さんはずっと、新感線の悪役に憧れていたそうですが。

生田「最初に出させてもらった『スサノオ~神の剣の物語』(2002年)では、TOKIOの松岡(昌宏)君が主役のスサオウをやっていて、それが悪い役だったんですよ。日本においては、悪役が主役の作品って、そんなに多くないじゃないですか? でも(演出の)いのうえひでのりさんには、悪の美学みたいなものがあるから、新感線で描かれる悪の色気には、ずっと憧れがありました」

古田「松岡は『スサノオ』のときに、オイラに相談しに来たんだよ。『新太さん、劇団☆新感線って知ってますか?』って聞いてきた(一同笑)」

生田「『こんな話来てるんですけど、どう思いますか?』と(笑)」

古田「『スサノオって芝居で、スサオウって役なんですけど・・・』って、それオイラが昔やった役だよ!(一同笑)」

──ネタみたいな話ですね。『バサラオ』でのお2人の関係は、どのような感じですか?

古田「斗真と倫也はクルクル裏切るんです。味方になったフリをして、裏切っていく」

生田「確かに。古田さんは帝で、僕と倫也で担ぎ上げて政権転覆を狙うんだけど、僕らだけじゃなくて、みんながもう悪い奴。タダじゃ転ばない奴らばかりですね」

古田「ちゃんとしてるのは(西野)七瀬ちゃんだけ。でもオイラはねえ・・・何度でも言うけど、本当はコイツらを使って下ネタミュージカルをやりたい(一同笑)。本当の本当に。体のきくキレイな男の子たちと、キレイな女の子たちが「◯◯◯◯◯◯〈自主規制〉」って歌い踊るミュージカルをやりたいですね」

生田「なんですか、◯◯◯◯◯◯〈自主規制〉ミュージカルって! 初めて聞きましたよ(笑)」

◆ 「斗真には迷いがない。工夫したりする奴苦手なの」(古田)

──古田さんは『スサノオ』のときから、生田さんを気に入ってたそうですね。

古田「稽古場に遊びに行ったら斗真がいて『素直でいい芝居するなあ。子役からやってて、場馴れしてんだろうなあ』って思ってた(笑)。でもそのあと観に行った芝居で・・・明治座(注:東京の劇場)だっけ?」

生田「はい、『あずみ~AZUMI on STAGE~』(2005年)って舞台を観に来ていただいて『お前、上手くなったなー!』って言ってくれて、すごくうれしかったのを覚えてます」

──生田さんを「いいなあ」と思ったポイントはなんだったんですか?

古田「迷いがない。迷ったり、工夫したりする奴苦手なの、オイラ」

生田「ハハハ! 工夫ね」

古田「自分のアイディアとか出さずに、言われたことをやろうよって。倫也も最初に見たときから『こいつ、いいなあ』と思ったけど、演出家や監督に聞いてみたら、やっぱり2人とも『え? よくわからないッスけど、やります』みたいなところがあるって。言われたことをちゃんとこなすというのは、俳優として一番正しいことだと思う。だから斗真は本当に、この世界に入ったときから、素直に楽しくやっていたんだと思うよ、きっと」

──古田さん自身、言われたことは断らず、なんでもやるって言ってましたもんね。

古田「言われたことをやってOK貰えば帰れるんだから(笑)。早く帰った方がいいんですよ。工夫とかしてないで」

◆「なんでこの人、ぽちゃぽちゃしてるのにかっこいいの?」(生田)

──生田さんから見た、古田さんの魅力は?

生田「17歳で初めて出会ってから、ずっと古田さんのお芝居を観てきたんですけど『なんでこの人、ぽちゃぽちゃしてるのにかっこいいんだろう?』『なんでこんなに色気があるんだろう?』って、どんどん気づいていくんですよね。僕だけでなく周りの人たちも、度肝を抜かれることがいっぱいあるし、『バサラオ』でも古田エッセンスがどのように入ってくるのかは、楽しみにしているところです」

──生田さんが「新感線で楽しそうな大人たちに出会ったから、俳優をつづけようと思った」というのは有名な話ですが、今回は生田さん39歳記念の「39(サンキュー)公演」と銘打たれるとか、本当に親密な関係ですね。

生田「この前も稽古場で『斗真、いくつになったん?』『もう40になります』『お前、制服を着て来てたのになあ』という会話がありました(笑)。いまだに17歳で止まってるんだなって。だから実家に帰ってきたような温かみがあるんですが、昔から一番近くで僕を観ている皆さんなんで『この人たちの前で、下手なことはできない。しっかりしたものを見せないといけない』という、緊張を感じさせていただけるような場所でもあります」

──緊張と緩和がハンパない現場だと。

生田「新感線はそういう場所ですね。『スサノオ』のときは、新感線が東京に出てきてそんなに経ってない頃でしたけど、そこから劇団も大きくなって、規模が膨れ上がっていって。自分もそれに負けないよう、また新感線に呼ばれるように、がんばって並走してきたような感覚もあります」

──古田さんは、最近は自分で舞台を企画されたりもしますが、新感線というホームがあることの良さを感じることはありますか?

古田「結局オイラが新感線に帰ってくるのは、さっき言ったような下品なミュージカルを、大掛かりにできる場所だから。オイラは宮藤(官九郎)とか福原(充則)とかを使って、セコい音楽劇を作ったりしてるけど(笑)、新感線は新感線で大仰なことができる」

生田「『轟天』(注:新感線のネタ物芝居の最高峰と言われるシリーズ)とかね」

古田「そうそう。『轟天』みたいなことができるのは新感線だけ。だからそこは戻る場所としてあって、セコいことはよそでやるっていう。でも『セコい』っていうのは『面白』でもあるから。新感線の大仰な面白もいいけど、セコい面白もやっていきたい。ほかにもいろいろ考えてるんですよ。井上芳雄とか山崎育三郎とかを使って、そいつらの顔が一切見えないミュージカルをやるとか(笑)」

生田「ハッハッハ! 観たいけどねえ・・・『金返せ!』って大クレーム来ますよ」

◆「斗真が生まれた頃は、ライブハウスでお芝居やってた」(古田)

──この公演中に40歳を迎える生田さんですが、古田さんから40代に向けてのアドバイスは、なにかありますか?

古田「オイラ、劇団に入って今年で40年だからね。オイラが新感線に入ったとき・・・大阪のライブハウスでお芝居をやってた頃に生まれてるのか」

生田「そうですよねえ」

古田「そんな斗真とか倫也みたいな信頼できる後輩が、もうすぐ40になるっていうのに、まだオイラと遊んでくれるっていうのが本当にありがたいです」

生田「古田さんが40歳のときは、新感線は『アカドクロ(髑髏城の七人)』(2004年)とか、その辺り?」

古田「かな。でも40歳とか、なにも気にしていなかった。45を超えてから『あ、ダメだ。腰が! 首が!』みたいな」

──正念場は5年後ですか。

生田「いや、そういうことも楽しめればいいなあとは思いますけどね」

古田「それは大丈夫。なにかあったら、すぐに医者を紹介します。だいたい痛み止めの注射を打っときゃあ、なんとかなるもんですよ(笑)」

◆ ちなみに…2人にとって「美しいもの」とは?

──今回、生田さんが演じるのが「誰をも一目で魅了する美貌を持つ男」ということで、「すごくきれいなもの」と聞いて、お2人が思いつくものってなんですか?

古田「オイラは楽器かな。弦楽器も打楽器も、楽器はどれも美しいと思うし、発明した奴はすげえなって思う。管楽器とか、どういうつもりで思いついたの? って思うけど、なにかしらの美意識がないと、ああいう形にはならないでしょ? パソコンとかは『無粋だなあ』と思うけど、楽器は美しいなと思いますね」

生田「ハイキングが結構好きなんですけど、やっぱり頂上まで登ったときの景色は美しいですよね。つらい思いをして登ったぶん、感動もたくさんもらえる」

古田「自然! 自然はなんか、ずるいよなあ(笑)」

生田「確かにね。屋久島が好きなんです。登ってる時間も長いですし、達成感と景色が本当にいいです」

──この芝居もまた、3カ月以上に渡る長丁場ですから、ゴールの景色と達成感がすごそうですね。

生田「そうですねえ。まだまだ本当になにも見えないですけど、本当に楽しみたいですね。一回一回を」

古田「ただ今回、メインキャストが粟根(まこと)以外は全員既婚者なんで(笑)、東京だと終わったあと、みんな家に帰んなきゃいけないんですよ。でも博多と大阪(の公演期間)が長いから、そのときは『よーし、みんなメシ行くぞ!』って言えるのが楽しみです」

◇◇

『バサラオ』は7月の福岡、8・9月の東京公演を経て、大阪は10月5~17日に「フェスティバルホール」(大阪市北区)で上演。チケットはS席1万6500円、A席1万2500円、ヤングチケット(22歳以下)2200円で、9月1日から発売開始。

(Lmaga.jp)

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