女芸人No.1決定戦「THE W」ダークホース、やましたって何者? 関西勢で唯一決勝へ

2024年、将来有望な若手芸人たちが切磋琢磨する「よしもと漫才劇場」に、ゆりやんレトリィバァ以来となる女性ピン芸人での劇場メンバー入りを果たした、やました。それから彼女の快進撃が始まり、同年の『ABCお笑いグランプリ』決勝、『NHK新人お笑い大賞』本戦にも進出した。

そんなやましたが、関西勢で唯一のファイナリストとなり、『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』決勝(12月10日放送)の舞台に立つ。ビッグネームが揃う今大会で、どんな結果を残すのか。決戦を前に、やましたに心境を訊いた。(取材・文/田辺ユウキ)

■ 可能性を秘めた「お試し枠」で挑みたい──初めての『THE W』決勝が近づいてきましたね。

2024年は『ABC』決勝、『NHK』本戦に進んでいたこともあり、本当におこがましいのですが「『THE W』は決勝へ行っておかないと!」と思っていたんです。・・・でも、それは私の思い上がりでしたね・・・。

──どういうことですか(笑)。

準決勝の手ごたえがあまり良くなかったんです。ただ普段は劇場(よしもと漫才劇場)で女性ファンが多いなかで舞台に立って、『ABC』もそれに近い客層で、『NHK』はご高齢の方が多い状況でやってきて、そこで笑ってもらうのって女性のピン芸人としては結構難しさがあるんです。あと賞レースで競ったのも、『M-1』や『キングオブコント』で結果を出している方たちでしたし。

──そう言う場所でしのぎをけずってきた自負は当然ありますよね。

『THE W』の準決勝は男性客の方が比較的多くて、すごく笑ってくださるというか、温かい雰囲気だったんです。だからこそ「これは抜きん出てウケないといけないんじゃないか」「めっちゃウケるはずだ」と。結果、そんなことはなくて・・・。つまり自分を過信していたんです。だから決勝進出と聞いて「いいんですか。本当にありがとうございます!」という感じです。決勝も優勝はそれほど意識せず、後々にいっぱい仕事を振ってもらえる可能性を秘めた「お試し枠」みたいな気持ちで臨みたいです。

──しかも今回の決勝には、キンタロー。さん、紺野ぶるまさん、河邑ミクさんら女性ピン芸人のビッグネームも揃っています。

みなさん売れっ子ですから、素直に「賞とかもうええやないですか!」と言いたいです(笑)。あとびっくりしたのが、11月20日のファイナリスト記者会見のキンタロー。さん。念願の決勝進出だから熱い感じかと思ったら、ずっとふざけてるんです。『シャイニング』のジャック・ニコルソンをやったり、質問を振られたら奇声を発したり。質疑応答になってなかったですもん。「めっちゃお笑いを入れてくるやん!」って。そんな方々のなかですから、「私はとりあえず覚えてもらいにきました!」と言えるのが強みですね。

■ 『M-1』進出が大きな変化に?「想像していなかった」──それでも『ABC』『NHK』で決勝進出するなど、やましたさんの現在の勢いは目を見張ります。

個人的には、同じピン芸人の真輝志さんと組んで『M-1グランプリ2024』に出た経験がとても大きかったです(準々決勝敗退)。というのも3回戦で、自分が想像していなかった拍手笑いが起きたんです。いつか自分もそういう拍手笑いがもらえる日が来るかなとは思っていたのですが、「あ、ここでもらえるんや」と驚いて。真輝志さんから得たものはすごくたくさんあって、練習のときも「声が小さいから、もっとボリュームを上げた方がいい」とか。やっていたつもりでもできていなかったことが、真輝志さんとの練習で気づけたんです。

──真輝志さんのアドバイスは、やましたさんのネタにも影響を与えたりしましたか。

真輝志さんは漫才の練習のとき、よく「やましたがこういうことをしているところ、見てみたい」と言ってくるんです。で、大きい声を出させたり、泣き真似をさせたりしてくる。ネタが終わっても「やましたが一人でボケてるところが見たい」って、アドリブで続けさせてきたり。私もヒートアップしてリアルな嗚咽とか出すと、めっちゃウケてくれるから、もっとやりたくなってくる。そういう「真輝志イズム」は、間違いなく自分のピンネタにも生かされています。

──『THE W』で披露するネタの仕上がり状況も気になります。劇場でいくつかのネタを拝見していますが、少しずつ変化を加えたりしていて。よりおもしろくなるようにブラッシュアップされていますよね。

ご覧になっている方々に笑っていただきたいのは当然として、『THE W』では審査員のみなさんの票をどのように獲るかももあえて意識したいです。たとえば、ぼる塾さん、おかずクラブさんにパワーで対抗しても、きっと敵いません。だから、とにかくブワーッと喋り続けたり・・・そうやって今回の『THE W』をストイックな大会の流れに持っていきたいですね。

──「ストイックな大会の流れにする」って、すごくかっこいいですね。

なんか偉そうに言っちゃって、本当にすみません・・・。ただ、ずっと喋るだけでは印象に残らないから、「こんなやつでも、こんなことをするんや」と思わせるようなこともちゃんとやりたいです。

──『THE W』と同時進行で、『R-1』も迫ってきましたね。良い流れで『R-1』にも挑戦できるのではないですか。

2024年の流れを作ってくれたのは、2023年11月からABCラジオ『兵動大樹のほわ~っとエエ感じ。』に出していただけるようになったことかもしれません。その番組の上ノ薗(公秀)プロデューサーは、劇場入りを目指す若手のライブもよくご覧になっている方なんです。そこで「あなたのネタで声を出して笑ったことはないけど、今後化けそうな気がする」と声をかけてくださったんです。そうやって、感じたことをまっすぐ言ってくださる方はなかなかいないですから。

──そんなことがあったんですね。

あとは、なにより「笑ったことがない」と言いつつ何度か見てくださっているから、「気にしてもらえたんだな」と励みになりました。それからいろんな仕事もいただけるようになりましたし。兵動さんの番組が良い流れのきっかけになったと思います。

──こういったインタビューは「では最後に意気込みをどうぞ」と締めるのが定番ですが、やましたさんは「意気込みNG」ですもんね!(既出の『THE W 準決勝全38組インタビュー』にて発言)

お笑い芸人ってなんかあったら意気込みを求められるから! そもそも「お笑い芸人なんやから、とりあえず意気込め」という風潮がどうなんかなと。『THE W』の決勝なんやから、言われんでも意気込むに決まってますやんって。しかもみなさん、大体「では改めて、意気込みをどうぞ」って振ってきますよね、それって、こっちが既に意気込んでいることを気づいているから「改めて」と言うんでしょ?「なんで改めなあかんねん!」と。

──ハハハ(笑)。いや、このインタビューで『THE W』の決勝に挑むやましたさんの気持ちはしっかりと伝わってきました。

『THE W』って、SNSとかでも「ここに出ている女芸人って『M-1』『キングオブコント』で勝ってない人らの集まり」「『THE W』に賞金1000万円はやりすぎ」とか言われるじゃないですか。実際、女芸人は勝ってないから、それはそうかもしれません。でも私はそういう人の肩を組みに行きたいんですよ。「うん、言ってることは分かるで。でも、出場資格があるんやったら出るくない?1000万円のチャンスがあるのってデカない?もらえるなら、もらいたいやん」って。意気込みではないですけど、いつかそれを言いに行きたいですね!

やましたの出場する『女芸人No.1決定戦 THE W 2024』決勝の模様は12月10日、夜7時より生放送される(日テレ系)。

(Lmaga.jp)

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