まひろだけではない 倫子と行成の「道長」への愛…さまざまな愛のかたちを描いた『光る君へ』
平安時代の長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を、吉高由里子主演で描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。12月15日放送の最終回「物語の先に」では、源倫子や藤原行成など、まひろ以外の「道長を愛した人」の決断や結末にもスポットが当たり、そのたびにSNSが大いに盛り上がった。
■ 道長と面会したまひろは…最終回のあらすじ
藤原道長(柄本佑)の嫡妻・源倫子(黒木華)は、道長とまひろの関係を知りながら、夫を力づけるためにまひろに妾になることを願い出る。迷いを見せるまひろに、倫子はいつから道長と深い関係になったのかを問う。お互いが子どもの頃から、非常に特殊な関係を築いていたことを知った倫子は、娘・彰子(見上愛)も含めて自分たちはまひろの手のひらの上で転がされていたように思い、このことは死ぬまで胸にしまうよう命じた。
藤原隆家(竜星涼)から道長の具合が良くないと聞いたまひろは、倫子に呼び出されて道長と面会。「俺は一体何をやってきたのであろうか」と悔いる道長に対して、まひろは戦のない泰平の世を守ったことを称え、「『源氏の物語』はあなた様なしでは生まれませんでした」と感謝を述べた。それからまもなく、倫子は道長が寝床で冷たくなっているのを発見。それと同じ日に、道長を慕っていた藤原行成(渡辺大知)も突然逝去したのだった。
■ まひろと道長のディープ過ぎる関係に改めて驚き
倫子様が「あなたと殿はいつからなの?」と、剛速球ストレートで道長との関係を詰問するという、とんでもなく続きが気になる終わり方をした前回。思えば『光る君へ』はこんな風に「いや、そこで終わる!?」というシーンであえて区切り、視聴者を巧みに煽る大河であった。そして冒頭から、この続きが展開された最終回だが、特に修羅場とはならず、むしろ「殿を力づけるために妾になって!」という、我々の予想をはるかに越えた提案が。
そのためSNSでは「『この泥棒猫っ!』とはならないところは・・・時代かな?」「正妻が『妾になってくださらない?』というのは、寛容に見えるけど上下関係が確定するってことですもんね。さすが倫子様」と、倫子様のしたたかなおおらかさに感心の声が上がったけど、まひろと道長が小さな頃から、しかもお姫様育ちの自分には決してできない体験を乗り越えてきた仲と知るにつれ、顔から微笑みが消えていく姿がなんとも切なかった。
SNSでも「正妻の余裕で先制した倫子様。まさかの幼馴染み砲を受ける」「倫子様、何気なく尋ねたら思いの外ハードな話が出てきてドン引きしとるがな」「いや情報量多すぎるでしょう、倫子さまにとって」「9歳から知ってるだの、母の敵が道兼だの、友を2人で葬っただの、まひろが完全に自分を超えてきてオーバーキルだよね」と、改めてまひろと道長のディープ過ぎる関係を確認するとともに、倫子に同情する声があふれた。
■ 道長のために…プライドを捨てた倫子に絶賛の声
それから寝たきりになり、ただ死を待つのみとなった道長。倫子は道長がしょっちゅう「まひろチャージ」をしていたのを知ってか知らずか、最後の最後にまひろを呼び出した。まひろの立場からすれば、死に目に会えるとは思ってなかったソウルメイトを見送れる幸せな一時だが、倫子としては自分の嫉妬やプライドを力付くで抑え込んで、愛する夫の命をつなぎとめる最上の手段を選んだ形。倫子という女性の強さと愛の深さを、ここに来て思い知ることになった。
SNSでも「倫子様の器ブラックホールなの?」「自分のことなんて見てくれてないの知ってても、心の底から道長を愛してたんだね」「夫の死に目には会えなかったのに、妾の話を蹴った最高権力者の末期には呼んでもらえるの、倫子さまの度量と道長への愛が巨大すぎるやろ」「この人の強さ、賢さ、愛の大きさ、嫉妬もプライドも捨ててまひろに頭を下げるその気高さに感嘆の息がこぼれた」など、圧倒されるようなコメントが。
それゆえに道長の死を見届けたのがまひろではなく倫子で、おそらくはまひろのために伸ばしていた手をそっとしまう姿に、「本当の最後の最後は、倫子様がみとるんだな。正妻の仕事を最後にできてよかった」「まひろに伸ばした道長の手を逝く時に握る人がいなくて、逝った後に倫子様がそっと握って整えたの、めっちゃまひろと道長と倫子様の最初から最後までを表している」「僕はこれ以上に格好良くて強い負けヒロインを知らないぜ」など、安堵するような言葉が並んだ。
■ 道長と同じ日に亡くなった行成、これは史実だった
そしてもう一人の道長強火担といえば、藤原行成だ。影に日向に道長を支え、多分性格に合わないダーティな根回しもやってのけ、「俺のそばにいろ」と言われれば黙って従っちゃうという行成君は、道長の死を知ってか知らずか、同じ日に倒れてそのまま亡くなった。まるでドラマのようだけど、これは藤原実資(秋山竜次)の日記にも記されている史実(ただし、実際に亡くなったのは行成が先)。むしろこの史実から『光る君へ』の行成は、道長のもう一人の運命共同体のようなキャラクターにされたそうだ。
このあまりにも劇的な死に、SNSも「道長ガチ勢すぎる最期」「よかったね道長、ひとりでの旅立ちにならなかったよ」「きれいな終わり方、と後々まで言われるBLや」「この2人こそソウルメイトでは・・・」などの声が上がり、さらに2人の死を日記に記して涙する実資にも、「泣きながら日記書く実資殿とか・・・こんなんこっちが泣くよ!!」「一言も発せず涙を流す実資にこんなに心打たれるなんて」と、もらい泣きをしたとのコメントが多数上がっていた。
■ さまざまな「愛のかたち」が描かれた『光る君へ』
『光る君へ』の核となったのは、確かにまひろと道長の、単なる男女の愛を越えたソウルメイトの絆だったけれど、自分の気持ちより道長の気持ちを考えた倫子といい、性別を超えた愛を貫いた行成といい、さらにはまひろをその過ちごと愛してくれた藤原宣孝(佐々木蔵之介)といい、社会を敵に回しても后の定子(高畑充希)を一途に愛した一条天皇(塩野瑛久)といい、現代の価値観には縛られない「愛のかたち」が、多数描かれたドラマだった。
これぞアモーレな平安時代に、そして光る君といろんな姫君たちとの愛を描いた『源氏物語』にまつわるドラマにふさわしい人間曼荼羅だった。特に若い人には、これからいろんな人物と関係を築いていくなかで、「あれ? なんかこの関係は普通じゃないな」と気付いたときに、『光る君へ』を思い出したり、参考にすることが出てくるかもしれない。
◇
12月29日には『光る君へ』総集編(全五巻)が午後0時15分から放送される。次の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』は、横浜流星主演で、江戸時代のメディア王・蔦重こと蔦屋重三郎の波乱の生涯を描く。2025年1月5日から、NHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート(第1回の放送は15分拡大版)。
文/吉永美和子
(Lmaga.jp)