許すまじ悪い大人…昔も今も面倒な「出版事情」に泣かされた蔦重、本屋デビューの夢散る【べらぼう】
横浜流星主演で、数多くの浮世絵や小説を世に送り出したメディア王・蔦屋重三郎の、波乱万丈の生涯を描く大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。1月26日放送の第4回「『雛形若菜』の甘い罠」では、蔦重が相変わらず驚きのアイディアで錦絵作りに挑むものの、思わぬハプニングや巧妙な罠に引っかかっていくという流れに、視聴者は一喜一憂させられた。
■板元として錦絵を販売するはずが…第4回あらすじ吉原の主人たちから錦絵の制作を依頼された重三郎は、女郎たちの負担を避けるため、呉服屋の売り込みたい着物を女郎に着せることを条件に、呉服屋に入銀させるという手を思いつく。錦絵を得意とする地本問屋・西村屋与八(西村まさ彦)と手を組んだことで、制作は順調に進むが、礒田湖龍斎(鉄拳)の下絵をうっかり水浸しに。しかし唐丸(渡邉斗翔)がそれを寸分たがわず写し取ったことで、難を免れた。
板元「耕書堂」として、錦絵『雛形若菜初模様』を販売するつもりの重三郎だったが、完成披露の場に現れた鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)と鶴屋喜右衛門(風間俊介)から、地本問屋の仲間内以外の本の売買は禁じられていることが告げられる。重三郎は吉原のためを思い、西村屋単独の販売を泣く泣く承諾。しかしそれは最初から、吉原の囲い込みを狙う鱗形屋と、西村屋が仕組んだ罠だった・・・。
■資金調達に閃いたのは「ファッション誌のタイアップ企画」前回『一目千本』を成功させたことで、本づくりの楽しさだけでなく、吉原に本当ににぎわいが戻ったのを見て「自分の作ったものが、人を動かす力になる」という、メディアの仕事の意義と喜びまで知ることになった蔦重。もうなにもかもが順調で、早くも主人公無双状態に突入か・・・と思っていたら、第4回という案外早い段階で、いろいろと失敗&挫折を味わうターンに入ってしまった。
まずは資金の調達。これまでは鱗形屋の手伝いだったり、女郎たちからの出資だったりしたけれど、今回は女郎たちに最新のファッションに身を包んでもらう代わりに、呉服屋から宣伝費をもらうという商法をひらめいた。モデルも洋服も同時に宣伝するというこのやり方は、カタログよりはファッション誌に近いものだろう。今でもいろんな雑誌で使われるこのウインウインな関係は、蔦重が発明したものだったのだ。
これにはSNSも「クラファンがダメなら、スポンサー引っ張ってくればいいじゃない」「蔦重は ファッション誌のアイデアを 思いついた!」「賢い! 宣伝費で賄おうって発想は君からなのね」「『錦絵にする女郎に呉服屋が売りたい着物を着せる』今で言うタイアップ企画ですな」「これは日本初のファッション雑誌誕生物語でもあるんじゃないでしょうか」などの興奮の言葉が。
しかしその大事な下絵を、猫が花瓶を倒してびしょ濡れに! この構図に「取材用の写真を撮ったSDカードがクラッシュ」という悪夢を思い出して一瞬頭が真っ白になった筆者だが、SNSでも「入稿直前の原稿データを吹っ飛ばしたことのある絵師さん達が一緒に絶叫しそうな衝撃の場面」「アナログ原稿に何かしらこぼしたことがあるニンゲンには笑えない」などの声があり、それと同時に「大切な原画をダメにしてしまったネコチャンを誰も叱らないのが素晴らしい」という「猫は悪くない!」のコメントもあふれかえっていた。
■うまい話には裏がある…蔦重の新規参入を阻んだ「甘い罠」これに凝りて「下絵は大事な所に保管」というのを痛感したはずの重三郎だけど、そこからすぐさま「うまい話は罠がある」ということまで学んでしまうことになった。西村屋が渡りに船のような話を持ちかけてきたときに、蔦重はホイホイ乗ってしまったけれど、それを聞いていた養父・駿河屋市右衛門(高橋克実)は不審な顔つきをしていた。やはり人間の裏の顔を見続けてきた忘八、西村屋の笑顔の裏にかすかな企みを感じていたのかもしれない。
そして予想通り、西村屋は鱗形屋とグルになって、重三郎の才能を利用して錦絵をタダで完成させただけでなく、将来の商売敵となる道も断ち切ってしまった。これにはSNSも「本屋連、蔦重の苦労した仕事を横取りかーい! 汚えのぉー! ええ?」「あるあるだよね。売れそうな新しいとこを協会とかそういうのに入れないってやつ」「頭手足動かした奴の功績を口と権力持った人がぶんどっていく構図、クリエイターにはあるあるすぎて嫌な記憶がブワブワと蘇ってくるわ・・・」などの怒りの声が上がっていた。
実は現在の書籍・雑誌の販売も、出版社と書店は直接の取引ではなく、取次の会社をいったん通さなければ流通ルートには乗れないというのが基本。ネット通販の登場で、その辺りはだいぶゆるくなっているみたいだけど、数10年前までは取次コードがあるか否かが、文字通り出版社の生命線だった。蔦重の時代とはまたルールが違うけれど、新規参入が結構面倒な世界という点では、思った以上に現代と地続きだなあと思える。
今回は「吉原のため」という言葉でいったん身を引いた蔦重に、SNSは「ひどい! ひどい! がんばったの蔦重やん! とテレビに向かって叫んだ」「蔦重さん、悔しさバネに見返してやれ」「口惜しいなあ蔦重。だけど今回の経験はきっと大きな糧になる」などの声援が送られた。しかし今後のことを考えると、わかりやすく悪どい鱗形屋よりも、融通が効かないのかとんでもなくドス黒いのかが見えない鶴屋の方が曲者の予感がする・・・蔦重がこの本屋コネクションをいかに突破していくのかが、どうも前半の大きな鍵になりそうだ。
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大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』はNHK総合で毎週日曜・夜8時から、NHKBSは夕方6時から、BSP4Kでは昼12時15分からスタート。2月2日放送の第5回「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」では、本屋になるための道を探し求める重三郎の姿と、唐丸に不穏な動きがある様が描かれていく。
文/吉永美和子
(Lmaga.jp)
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