松井氏引退式「幸せな野球人生だった」
大リーグのヤンキースなどでプレーし、昨年12月末に現役引退を表明した松井秀喜氏(39)が28日(日本時間同日深夜)、03~09年まで所属したヤ軍と1日限定のマイナー契約を結び、本拠地のヤンキースタジアムで引退式を行った。
ぐっときた。古巣ファンのスタンディングオベーションが心にしみた。観客席には日の丸とともに「WE NEVER FORGET(絶対に忘れない)」「夢をありがとう」…無数のメッセージボード。「球場に入ったときから泣きそうでした。うーん、ちょっと言葉にならないぐらいの感動、うーん、改めて幸せな野球人生だったと思います」ずっと憧れ、愛し続けたチームの一員として引退の日を迎えた松井氏は思わず、声を詰まらせた。
紺のスーツで松井氏が記者会見場に現れたのは試合開始2時間前の午前11時すぎだ。テレビカメラ13台、日米、台湾の報道陣約150人が見守る中、契約書にサインし、「本当に光栄。感謝の気持ちでいっぱいです」と言って笑顔を見せた。02年オフにヤ軍と初めて契約を交わした当時の心境を「その時まで自分が過ごしてきた日々の中でもっとも幸せな瞬間だった」と表現した。
引退式典はホームベース付近で行われた。左中間の外野フェンスからカートで登場すると、その引退を悲しむかのように雨が降り出した。総立ちで大歓声を送ったファンに松井氏は手を振ってこたえた。
この日から戦列復帰したジーターからは、同氏がMVPを獲得した09年ワールドシリーズ仕様のユニホームを収めた額縁を手渡された。「これまでたくさんのチームメートがいましたけど、彼が最も尊敬できる選手だった」との言葉を贈り、試合開始直前のベンチではイチローとガッチリ握手。「きょうはチームメートですね」と言って、笑わせた。
始球式ではヤ軍の帽子をかぶり、ピンストライプの「55」を羽織ってマウンドに上がった。地面すれすれでミットに収まった自身の投球には「思ったより距離が長かったですね。でも届いてよかったです、はい」と言って安どの表情を浮かべた。
ヤ軍の主力選手として過ごした7年間を「本当に幸せな日々でした」と松井氏。一番の思い出を問われると、「最後(09年)のワールドチャンピオンは個人的には大きいかもしれませんが」と前置きしながら、メジャー1年目の03年に出場したレッドソックスとのリーグ優勝決定シリーズの最終第7戦の死闘を挙げた。
ヤ軍との契約書にサインをしたのが午前11時すぎ。フィールド上で引退手続きの書類に署名したのは午後1時前。時間にしてわずか2時間あまりの現役復帰。「最後にもう一度、憧れのユニホームを着て、ヤンキースタジアムのグラウンドに立てたことは本当にうれしい。今日は生涯忘れられない日になると思います」。心からの気持ちを言葉にして松井氏が日米20年間のプロ野球人生に別れを告げた。