「カージナルス６-２マーリンズ」（１５日、セントルイス）

　マーリンズ・イチロー外野手（４１）は、カージナルス戦で２安打を放って日米通算４１９３安打とし、タイガースなどで活躍したタイ・カッブが持つ大リーグ歴代２位の４１９１安打を日米通算で超えた。安打数の内訳は日本１２７８、大リーグ２９１５。

　場内放送は何もなかった。それでもセントルイスの野球ファンは知っていた。少しずつ拍手と歓声が大きくなり、一斉に立ち上がる。満員４万４０００人の目は一塁上のイチローに注がれていた。

　「（反応が）徐々に大きくなるのは体感できた。でも僕は次のプレーに気持ちがいってましたから。戸惑い、うれしい戸惑いでしたね」

　右手でヘルメットを掲げ、ゆっくりと客席を見渡す。初回の右前打でカッブ超えの通算４１９２安打。三回の打席では、右中間の大型ビジョンがその偉業を改めて伝えた。「日米通算の記録なので、アメリカ人としては気に食わないこともあるだろうし、いろんな声があるのは想像できるけどこんなふうにしてくれるのはジーンとくる」。イチローの唇がかすかに震えた。

　試合後のクラブハウスでも心を揺さぶられた。「チームメートが日本酒で乾杯してくれた」。用意したのは元楽天のマギーだ。シーズン中に日本酒を飲むのはプロ２４年目で初。その味は格別だった。

　目の周りを桜色に染めたイチローがしみじみと言う。「セントルイスが特別な場所になった。ストーリーはファンやチームメートが作ってくれる。僕の記録がそれを作るわけではない」。歴代最多安打のローズまであと６３本。新たな物語が待っている。