仰木氏と三輪田氏 イチローの天国にいる2人の恩人
マリナーズのイチロー外野手(45)が21日、現役引退を発表した。同日行われた東京ドームでの、アスレチックスとの開幕第2戦でも前日に続き「9番・右翼」で先発したイチロー。日米両球界で記録と記憶に残る活躍を演じた大選手のラストプレー。一つの歴史が終わった。
イチローには2人の恩人がいる。オリックス時代に監督だった仰木彬氏、もう一人は同球団でスカウトを務めた三輪田勝利氏(ともに故人)だ。
仰木氏はプロ3年目でレギュラーに抜てきした。型にはめない指導哲学と独特の「振り子打法」でチャンスを与え、プロ野球史上初のシーズン200安打を放ち、社会現象にもなったイチローの活躍を後押しした。
1994年のシーズン序盤、チームが大敗した後のバスの中での出来事だった。静かに下を向いていたイチローに「今日は二塁打を打った。おまえはそれでいい。勝ち負けは監督が責任を取る。選手は自分のやることをやればいい」と諭した。プロの責任とは何かを教えた。
三輪田氏は愛工大名電高時代に、抜群の打撃センスを見いだした。当時は細身で、プロで通用するか疑問視する声も多かった。
三輪田氏は無名の選手を球団に強く推した。その眼力がなければ、その後の日米での活躍はなかった。
悩みや将来の良き相談相手となり、大リーグ挑戦の志を最初に伝えられた。ドラフト会議を巡るトラブルに巻き込まれる形で命を絶った恩人の墓前に、イチローはシーズンオフには必ず花を供えている。