イチロー氏とマリナーズ支えたヘルナンデス、涙、涙の最終登板「楽しかった」
「マリナーズ1-3アスレチックス」(26日、シアトル)
イチロー氏とともにマリナーズを支え、今季限りの退団が濃厚なフェリックス・ヘルナンデス投手(33)がシーズン最終登板となったアスレチックス戦で6回途中5安打3失点。打線の援護なく、8敗目を喫した。
7年1億750万ドル(約188億円)契約の最終年は右肩痛による長期離脱でわずか1勝止まり。ファンの歓声に何度も涙を流した右腕はマリナーズ一筋15年で通算169勝、2524奪三振などの球団記録を残し、チームを去ることになりそうだ。
涙腺が崩壊した。試合開始前のウォームアップ。一塁ベンチからブルペンへ向かうヘルナンデスはファンから温かい拍手と歓声で迎えられると感極まり、あふれる涙を袖で拭った。
一回のマウンド。ベンチからフィールドに出たのはヘルナンデスだけ。チームメートの粋な演出による独り舞台。スタンディングオベーションが渦巻く中、ブルペンに立った右腕は帽子を観客席に掲げて感謝の意を示す。こらえきれず、マウンド上で再び、涙した。
ストライクを取るたびに歓声が、際どいボール判定には大ブーイングが起こった。ニックネームの「キング」にちなみに「KING’S COURT(王の庭)」と呼ばれる左翼線側スタンドの一角には「FOREVER KING(永遠の王)」と記された黄色のTシャツを着た熱狂的ファンが陣取った。
初回は1死から四球と連打で先制点を許し、二回は2死から2点本塁打で計3失点。序盤から劣勢を強いられたが、スタンドは「レッツゴー!フェリックス!」の大合唱でマウンド上の背番号「34」を鼓舞。それにこたえるかのように三回と四回はいずれも三者凡退。二、三、五回に空振り三振を奪うと、ヘルナンデスは左翼線側席に向かってグラブを突き上げた。
五回を終えて101球。2点ビハインドの状況だったが、サービス監督は33歳を六回のマウンドに送り出す。先頭打者を142キロのシンカーで空振りさせ、カウント3-1から132キロチェンジアップで中飛に仕留めると、興奮は最高潮に。ヘルナンデスはファンが総立ちになって声援を送るスタンドを見渡し、涙、涙、…。本拠地に「サンキュー!フェリックス!」の大合唱が響き渡った。
ベネズエラで生まれたヘルナンデスは大リーグ球団が争奪戦を繰り広げる中、16歳でマリナーズと契約。05年8月4日のタイガース戦で球団史上3番目の若さとなる19歳118日でメジャーデビューした。チームのエースとして09年にリーグ最多の19勝を挙げ、翌10年は13勝ながら最優秀防御率と最多投球回数を評価されてサイ・ヤング賞を受賞。14年には2度目の防御率タイトルを手にした。通算成績は418試合、169勝135敗、防御率3・42。09年から16年まで8年連続2桁勝利を挙げ、球宴には6回選出された。
試合終了と同時に自身も黄色のTシャツを着てフィールドでファンと交流したヘルナンデスは「たくさん泣いたけど、とても楽しかった。ここで15年間プレーしてきた。とても感情的になった」としんみり。
過去2年はけがに苦しみ、今季も右肩痛で3カ月の戦線離脱で1勝しか挙げることができなかった。若返りを図るマリナーズとの再契約の可能性は低いと見られており、「チームから話があるかどうか。来季はどうなるか分からないが、引退はしない」と、現役続行を宣言した。
3月21日に東京ドームで行われた今季開幕第2戦でイチロー氏が引退を表明し、ヘルナンデスの退団が決定的となった。投打の柱としてチームを支えてきた2人。マリナーズの一つの時代が終わった。