鈴木誠也「みんなが喜んでくれた。それがうれしくて」OP戦初本塁打で笑った本当の理由
「オープン戦、カブス8-5マリナーズ」(30日、メサ)
カブスの鈴木誠也外野手(27)が「2番・右翼」で出場し、四回にオープン戦初安打となる中越え本塁打を放つなど、3打数1安打2打点。デビューから4戦11打席目で飛び出した待望の一本に笑顔を見せた。
「たまたまって感じですね」。
試合後、会心の一打のはずの本塁打を振り返る鈴木に心からの笑顔はなかった。
前日までオープン戦3戦8打席連続無安打(2四死球含む)。この日も初回の打席で空振り三振を喫し、三回の打席では甘く入ったカーブを打ち損じて中飛。思わず、バットを叩きつけるような仕草で悔しさをあらわにした。「ど真ん中なんですけどね。思い出すとイライラするんで」。そう言って乾いた笑みを浮かべた。
ファン待望の1本は第3打席、五回2死一塁の場面だった。カウント1-1から真ん中付近の140キロシンカーを叩くと、高く上がった打球は中堅左の芝生席最前列に着弾。インパクトの瞬間を「こすってたので、どうかなという感じはあった」と表現した背番号27は「完全に行ったという感覚はなかった。またセンターフライなんじゃないかなという感じで(一塁まで)走っていた。ここ(アリゾナ)は飛ぶので、そのおかげで入りました」と言って笑った。
実は打席中に打撃フォームに大きな変化があった。最初の2球まではこれまでどおり左足を上げてタイミングを取ってスイングしていたが、本塁打にした1球だけはノーステップ打法に切り替えた。
「確率が高い方を選ぶ。タイミングが合っていないのに、同じことをやっても無理だと思う。それだったら、タイミングが合う打ち方をやって、そっちの方が失敗しても後悔なく終われる。それが3打席目ですね。初球振って、やっぱり(タイミングが)合ってないなと思った。思い切って変えようと。そうじゃないと振れないなと思った。たまたまうまく打てました」
広島時代に増やしてきた引き出しの一つ。18日の入団会見で口にした「変化の恐怖心は全くない」の言葉を実践した。
一塁を回ったところでパーンと手を叩き、小さく拳を握った鈴木。ホームに生還すると、先に得点した1番マドリガルからハグで祝福された。ベンチでは首脳陣やチームメートからハイタッチの嵐。ずっと笑顔だった鈴木は「単純にみんなが喜んでくれた。それが本当にうれしくて。自分の打撃に関しては、まだまだ全然ダメだなと思う」と本音を明かした。
25日のオープン戦初戦からここまで11打席に立った。
「毎日、いろんなことをやりながら自分に合うものを見つけていかないといけない。毎年、体も変わりますし、年齢が変われば、いろんなことが変わってくる。その年、その年で自分のスタイルに合わしていかないといけないんで、本当に『最初』っていうのは毎年、苦しんでるといいますか、すごく本当難しいですね」。
4月7日(同8日)の開幕まで残り8日。この日の本塁打が自分の求める打撃感覚をつかむきっかけになるか?との問いに「ならないと思います」と即答した鈴木が続ける。「ただ、どこかでそういうのが絶対にあると思うので、それを信じて辛抱強くやっていかないといけないなと思ってます」。自分に言い聞かせるようにそう言った。