大谷翔平、被打率・154の宝刀スプリットを封印したわけ 急造バッテリーの相棒に見せた大谷らしさ
「エンゼルス1-3アストロズ」(9日、アナハイム)
エンゼルスの大谷翔平投手が「3番・投手」で出場し、投手としては7回6安打3失点、与四球2、奪三振7。バッテリーを組むはずだった捕手の負傷者リスト入りや右手中指爪損傷のアクシデントに見舞われながら103球の力投でクオリティースタート(6回以上、3自責点以下)を達成したが、今季初黒星で開幕からの連勝は4で止まった。打者では3打数無安打を喫し、3試合ぶりのノーヒットで悔しさをのぞかせた。
悔しい1球は1点リードの五回だ。1死から四球で出した走者を背負った場面で、18、19年の同僚捕手だった9番マルドナドに逆転2ランを被弾した。フルカウントから外角スイーパーを左翼席へ運ばれた。さらに3連打で3点目を失った。
「投げた位置も悪かったですし、どちらかというと僕の方に責任がある。もちろん打ったバッターも、いい打席で、いい結果が出てっていうのもあると思うんですけど、やっぱり投げるべきスポットに投げ切れていないかなというのはあるかなと思いますね」
昨季17勝のバルデスとの投げ合い。同じア・リーグ西地区のライバルで昨季のワールドチャンピオンに貢献したエース左腕を大谷は「素晴らしいピッチャーなのでロースコアになるのは分かってました」と称え、「そこで逆転されてしまったというのが負けた要因かなと思います」と言った。
この日の試合前には4月21日のロイヤルズ戦から3登板連続でコンビを組んできたウォラックが首痛のため負傷者リスト入りが発表された。代役としてマイナーから昇格したオーキー捕手との急造バッテリー。今季からサイン交換電子機器ピッチコムを活用し、自ら球種を捕手に伝えている大谷がこの日の配球で“気遣い”を見せた。
この日投じた103球のうちスプリットはわずか1球。ツーストライクに追い込んでも被打率・154の伝家の宝刀を抜かなかった理由を「あんまり捕ったことのないピッチャーの球っていうのは捕りづらいと思う」と説明。ワンバウンドになりやすい球種とあって「初めて組むキャッチャーなので味方のブロッキング(体で投球を止める)のデータだったりとか、あまり分からない状態だったので、そんなにリスクのあるボールを選択して投げるのが有効かどうかっていうのを天秤にかけて投げている感じですね」とも言った。
五回のピンチでマウンドに集まった際にはこんなシーンもあった。捕手が投手を落ち着かせるために肩や背中に触れることはあるが、この時は大谷から捕手の肩に手を置き、ポンと叩いてコミュニケーションをはかった。
試合前のオーキーとのやりとり。同じ94年生まれの相棒から「初めてなので、キャッチャーの方からあまり行かないようにはしたい」と言われ、「そこは気にしないで感じたことがあれば、どんどん言ってほしい」と伝えたことを明かした大谷。この日は笑い合える結果にはできなかったが、随所にらしさが見えた試合だったことは間違いない。