大谷翔平 10年総額1015億円のドジャース移籍 世界一への渇望で97%後払い、ぜいたく税対策で示した献身
プロスポーツ史上最高額となる10年総額7億ドル(約1015億円)でドジャース移籍を選択した大谷翔平投手(29)。メジャー移籍後の6年間で一度もプレーオフに進出することができなかった二刀流は2年前、「ヒリヒリするような9月を過ごしたい」と話していた。念願のワールドシリーズ制覇に向け、ド軍との交渉で大谷が提案した究極の内容にデイリースポーツMLB担当・小林信行記者が迫った。
◇ ◇
大谷翔平投手がドジャースと合意した10年7億ドル(約1015億円)の契約内容の詳細が明らかになった。AP通信によると、10シーズンで大谷に支払わる金額は計2000万ドル(約29億円)、1年あたり200万ドル(約2億9000万円)だけ。今季年俸3000万ドル(約43億5000万円)と比べると“大減俸”。残りの6億8000万ドル(約986億円)は契約満了後の34年から43年まで1年6800万ドル(約98億6000万円)ずつ銀行口座に振り込まれる。
大谷が6年間在籍したエンゼルスとの再契約が厳しいと言われていた理由に、モレノオーナーがサラリーキャップの役割を果たしているぜいたく税にこだわったというのがある。21年オフの労使交渉で紛糾した課税対象となる球団総年俸の規定額。ドジャースもヤンキースなど、他の強豪球団同じように規定額をオーバーし、戦力補強の足かせとなっている。
大谷がそのことを知らないはずはなく、自身の入団が編成の妨げにならないように努めるのは自然な流れ。9日(日本時間10日)に代理人事務所CAAが出したバレロ氏の声明の中に「彼は長期的成功のため、両者(球団と選手)の真のコミットメントを反映した契約を構築しました」との一文があるが、大谷が提案し、合意した年俸の分割後払いがそれにあたる。
契約期間中に大谷が受け取る年俸は200万ドル(約2億9000万円)だが、AP通信によると、課税の対象として記載される来季の年俸は約4600万ドル(約66億7000万円)。この数字はバーランダー(アストロズ)とシャーザー(レンジャーズ)の今季年俸4333万ドル(約62億8000万円)を抜いてメジャー史上最高額だ。それでもアスレチックスの今季の総年俸を上回る7000万ドル(約101億5000万円)に比べると大幅の“割引”だ。
来季から18年MVPのベッツ、20年MVPのフリーマンとともにメジャー最強トリオを形成する大谷。実は、大型契約を結んでいるこの2選手も同じ理由でそれぞれ1億1500万ドル(約166億8000万円)、5700万ドル(約82億7000万円)を分割後払いで受け取ることになっている。
10年契約。今回の契約条項に完全トレード拒否権が含まれているのは全く珍しいことではないが、契約期間中にさらなる好条件を求めて残りの契約を破棄してFAになることができるオプトアウト権が盛り込まれていないのは異例だ。空前絶後の総額7億ドル(約1015億円)の契約を受けたのは野球を全世界に知らしめるため、野球界の発展のためと言っていいだろう。本当に欲しいのはお金ではなく、チャンピオンリング。ドジャーブルーのユニホームで頂点を目指す大谷の献身と気概が見える。
◆ぜいたく税 米大リーグで年俸総額が基準額を超えた球団に課される課徴金。球団間の格差是正や戦力均衡を目的に、2003年に導入された。基準の総額は23年が2億3300万ドル(約338億円)、24年が2億3700万ドル。対象球団は1年目が超過分の20%、2年連続だと30%、3年以上連続になると50%が課税される。基準額を2000万ドル以上超過した球団は、その金額によって追加で課税される。