米大リーグ、ドジャースは２１日、大谷翔平選手（２９）の通訳を務めてきた水原一平氏（３９）との契約を解除した。米スポーツ専門局ＥＳＰＮ電子版などによると、同氏は違法賭博で多額の借金があり、返済するために大谷の銀行口座から少なくとも４５０万ドル（約６億８０００万円）が送金されたと報じた。大谷の弁護団から「大規模な窃盗」として告発されたという。前代未聞のスーパースターの通訳によるスキャンダルにメジャー界は大きく揺れた。

　ド軍広報部は２０日未明からほぼ徹夜状態で各所からの問い合わせの対応に追われた。デイリースポーツの取材に対し、水原氏の解雇を認める一方で「球団はメディアの報道を把握しているが、現在は情報収集中であり、これ以上のコメントを控える」と返答するにとどめた。

　ＥＳＰＮによると、捜査当局が調べていたブックメーカーに水原氏の借金があり、大谷の口座から少なくとも４５０万ドル（約６億８０００万円）が送金されたことが判明。同氏は１９日に遠征先の韓国で９０分間にわたって同局の単独インタビューに応じた。

　同氏がスポーツ賭博に手を染め始めたのは２１年から。２２年末にはその損失は１００万ドル（約１億５０００万円）を越えた。借金は「雪だるま式に膨れ上がった」と表現。自身の年俸３０～５０万ドル（約４５００万～７５００万円）ではとても追いつかない額に達していた。

　記録に残っているブックメーカーへの返済は昨年９月と１０月、それぞれ５０万ドル（約７５００万円）ずつだった。大谷が右肘手術を受けた時期と重なる大切な時に水原氏は、大谷に肩代わりを依頼する形で個人パソコンを使って振り込んだと証言した。

　その一方で大谷の賭博関与を強く否定。賭けの対象はＭＬＢが禁じている野球ではなかったこと、自身が住むカリフォルニア州ではスポーツ賭博が違法であることを知らなかったとも主張した。

　ところが、水原氏はインタビューから一夜明けた２０日に前言を完全撤回。自身のギャンブルや借金について大谷には話していないと真逆の証言を口にした。時を同じくして大谷の弁護団から同氏を「大規模な窃盗」で告発する声明文が出された。

　水原氏は夫人とともに１４日からド軍の韓国遠征に帯同。前日２０日の開幕戦では逆転勝ちでチームは盛り上がったが、ＥＳＰＮ電子版によると、水原氏は試合後のクラブハウスで選手らを前に「すべては自分の過ちです」と罪を認め、「自分はギャンブル依存症です」と告白したという。また球団関係者によると、緊急ミーティングでマーク・ウォルター・オーナーが選手たちの前で話をしたという。異例の対応から球団に及ぼした衝撃の大きさがうかがえる。

　この日の大谷は宿舎からチームバスで球場入り。しかし、いつもそばを歩く水原氏がいない光景は違和感があった。試合前にはクラブハウスが報道陣に開放され、約２０人の記者が押し寄せたが、一度も姿を見せず。チーム練習にも参加することなく、屋内で集中力を高めた。

　ＭＬＢの規則では野球以外のスポーツへの賭けは許されているが、違法ブックメーカーの賭けは処罰の対象になる可能性がある。今回の報道とド軍の対応を受けてＭＬＢは調査を開始することが予想される。

　進行中の連邦当局の捜査からどんな新事実が明らかにされるのか。ド軍と１０年７億ドル（当時のレートで約１０１５億円）の契約を結び、世界のスポーツ界を代表する選手となった大谷を取り巻く環境は予断を許さない。