首位を走るレッドソックス好調の理由とは
昨季の最下位レッドソックスが、際立った補強をした訳でもないのにア・リーグ東地区の首位をキープしている。その好調の理由とは…。
【その1】古巣に復帰した指揮官ジョン・ファレル監督(50)の好采配と巧みな選手掌握術が奏功している。
レ軍投手コーチ(2007~10年)、ブルージェイズ監督(11~12年)時代に培った賜物だ。07年にはリーグ1位の防御率3・87と世界一制覇に貢献している。
現役時代は先発右腕としてインディアンスで活躍し、引退後は母校オクラホマ州立大投手コーチ(1997~01年)を務めた。教え子の1人に、99年ナ・リーグ新人王に輝いたスコット・ウィリアムソン投手がいる。この功績が評価されてイ軍育成部長に就任している。
【その2】今季は武器の150キロ前後の速球(ツーシーム、フォーシーム)、切れ味鋭カッター、スプリッターを191センチの長身から制球良く使い分け、先発で5連勝したクレイ・バックホルツ投手(28)が4月の月間MVPに選出された。
防御率1・19と抜群の安定感を見せ、東地区首位のチームに貢献。さらに、5月1日のブルージェイズ戦にメジャートップの6勝目を挙げ、防御率1・01とまさしくエースの働きぶりだ。
同投手は05年ドラフト1巡目(全体42位)でレ軍入団。07年8月17日、3Aからメジャー昇格してエンゼルス戦に登板。ジョン・ラッキー投手(現同僚)と対戦し、メジャー初勝利をマーク。その後のオリオールズ戦に先発登板し、10-0のノーヒットノーラン(4与四球)を達成した。
【その3】ダニエル・ナバ外野手(30)は左投げ両打ち身長178センチ体重91キロと小兵だが、チャンスに強いクラッチヒッターだ。
カリフォルニア州出身。サンタクララ大出身。07年独立リーグのチコ・アウトローズで活し、MVPに輝き08年1月ドラフト外でレ軍入団。10年6月12日のメジャーロースター入り。同日のフィリーズ戦に先発出場し、初打席の初球を外野スタンドへ劇的な満塁弾を放り込んだばかりか、二塁打も記録し、メジャー史上初のルーキー記録達成した。
4月20日のボストン爆破テロの際、本拠地でのロイヤルズ戦、1-2で迎えた8回に3点本塁打を放ち、バックホルツは4勝目。チームは7連勝。さらに、24日のアスレチックス戦でも左腕レスターの4勝(0敗)となる決定打を放っている「勝負強い」男だ。
【その4】レンジャースから移籍のマイク・ナポリ一塁手(31)が、カブレラ(タイガース)の36打点に次ぐ31打点を挙げる活躍は大きい。4月(15~21日)の週間MVPにも選出。首位躍進の原動力と言える。
【その5】指名打者デービット・オルティス選手(37)が右足かかと炎症のDLから復帰するや、勝負強い打力が復活。50打数で22安打(8二塁打、4本塁打)、17打点、打率・440。この日のレンジャーズ戦でもダルビッシュから初回に4号2ランを放った。「自分の家はオレが守る」が彼の持論だ。
【その6】ダスティン・ペドロイア二塁手(29)。08年MVPに輝いた好守、好打、俊足が売り。11年には21本塁打、26盗塁をマーク。今季は打率・294、12打点、7盗塁。
【その7】ジャコビー・エリズべリー中堅手(29)。11年に32本塁打、39盗塁を挙げた俊足・堅守・強肩の外野手で、生まれ故郷はオレゴン州のマドラス。05年ドラフト1巡目(全体23位)で入団。07年6月30のレンジャーズ戦でメジャーデビューしポストシーズン11試合で打率・360をマークし、ワールドチャンピオンに貢献した。
血筋は先住民ナバホ族。この年、マドラスでは世界一制覇を祝うパレードが行われたという。
今季は138打数38安打(6二塁打、3三塁打、1本塁打)、12打点、12盗塁、打率・279を挙げている。
一方、敵地で3連敗を食らったが、宿敵ヤンキースもアスレチックス戦に5-4で敗れ、ゲーム差は変わらず1・5。首位はキープ。明日からは本拠地でツインズ4連戦(6~9日)。ア・リーグ東地区首位争いから目が離せない。(次回は5月20日更新予定)
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牛込惟浩(うしごめ・ただひろ)1936年5月26日生まれ、76歳。東京都出身。早稲田大学を経て64年、大洋ホエールズに入団。渉外担当としてボイヤー、シピン、ポンセ、ローズなど日本球界で大活躍した助っ人たちを次々と獲得し、その確かな眼力からメジャー球界で「タッド」の愛称で尊敬された。2000年に横浜ベイスターズを退団。現在はデイリースポーツMLB解説委員。