白鵬を見守り続けた大鵬の金言
「大相撲九州場所・千秋楽」(23日、福岡国際センター)
横綱白鵬が昭和の大横綱・大鵬の納谷幸喜さんに並ぶ史上最多32回目の幕内優勝を達成した。角界の父と敬愛した存在と肩を並べた。
白鵬が横綱に昇進した07年、納谷さんから「宿命」という言葉を送られた。そして、「横綱に昇進した時から引退を考えていた」と告げられた。当時、角界に君臨していた朝青龍を追う対抗馬として上昇一途にあった白鵬には、言葉の意味が完全には理解できなかった。
その後も納谷さんからは節目ごとに言葉を授けられた。08年に二所ノ関一門の合同げいこに招かれた際には「きれいな体をしている。汗にまみれた体はほれぼれとする」。双葉山の持つ69連勝の角界記録に挑んだ10年九州場所の前には「自分が双葉山関の記録を抜いてもよいのか」と悩んでいたが、電話で「自分達が挑戦してもできなかった大記録。ぜひ超えてほしい」と背中を押された。
納谷さんは13年1月19日に他界した。白鵬は場所前などに時間をつくっては自宅や入院先の病院を訪れて近況を報告し、相談をしていた。訃報に接し、「国の宝を失った」と悲しみにくれた。
この日の表彰式。君が代を聞きながら口をゆがめ、涙を流した。家族やモンゴルの人々へモンゴル語で優勝報告をした言葉の中には「角界の父の偉大な記録に並んだことは約束と恩返しができた」という意味があったとした。横綱・大鵬への思いは、モンゴルの人々にも届いたはずだ。