桐生9秒台ならず「欲が足りなかった」
「陸上・織田記念国際・第2日」(19日、エディオンスタジアム広島)
男子100メートル決勝が行われ、日本人初の公認9秒台の期待が懸かっていた桐生祥秀(19)=東洋大=は10秒40(向かい風0・2メートル)で2位に終わった。ケンブリッジ飛鳥(21)=日大=が10秒37で優勝した。桐生が100メートルで日本人選手に敗れるのは、13年6月日本選手権以来、1年10カ月ぶり。
起こること起こること全てが、桐生の9秒台への挑戦の妨げとなった。ぐずついた天気となったこの日、毎年絶好の追い風が吹く織田記念にしては、珍しく向かい風。100メートルのレース前には、雨が降り始めた。静寂が張り詰める中、スタートの号砲がなったが、機器の誤作動により、やり直しに。「最初のスタートを出た瞬間に、スピードに乗っていかないのが分かった。重いなと感じてしまった」と桐生。マイナスに傾いた気持ちを立て直せず、2回目のスタート。いつもの加速は影を潜め、中盤からのケンブリッジ、塚原との3つ巴の競り合いにも勝ちきれなかった。
ただ、桐生自身が精彩を欠いたことも確かだった。3位に終わった18日の200メートルに続く敗戦。2日間で計4本を走ったが、どこか集中力を欠いた走りだった。3月のテキサス・リレーで、追い風参考ながら電気計時では日本人初の9秒台となる9秒87を記録。一躍、世間の注目が高まった中、「去年とは違う変な余裕があった。リラックスしすぎた。欲が足りなかった」。今季初戦で得た自信が心の隙を生んだのか。
シーズンはまだ始まったばかり。今後は5月に世界リレー(バハマ)を走った後、ゴールデングランプリ、関東インカレとレースが続く。「悔しさだけしかない」と話すこのレースを、偉業への糧とする。