鶴竜、左肩痛再発で立合い変化
大相撲秋場所で横綱としての初優勝を決めた鶴竜(井筒部屋)が28日、東京・墨田区の井筒部屋で一夜明け会見を行った。横綱に昇進してから9場所目でつかんだ悲願の賜杯。「ケガもあって、いろいろと苦しかった。うれしい気持ちとホッとした気持ちがある」と15日間を戦い抜いた心境を語った。3、5月場所を連続休場したピンチから立ち直っての復活V。やはり支えになったのは家族の存在だった。
「負けて家に帰ってきた日も笑顔ですぐに忘れさせてくれる。本当に大きな存在だった」と、ムンフザヤ夫人と5月末に生まれた長女アニルランちゃんに感謝した。
その一方で、14日目の大関稀勢の里で立ち合いで続けて変化したことが物議を醸している。変化した理由について「場所が終わったから言いますけど、言い訳に聞こえるかもしれませんが」と前置きしながら、休場の原因となった左肩の痛みが再発していたことを明かした。
5日目の佐田の富士戦、6日目の隠岐の海戦あたりで痛みがぶり返してきたそうで、そこからは「何とかその日の一番を取れるようにケアしてきた」というほどギリギリの状態だった。さらに10日目には関脇妙義龍に敗れ2敗となり、全勝の大関照ノ富士に2差をつけられて優勝の可能性は遠のいた。だからこそ照ノ富士が3連敗して、勝てば単独トップに立つ稀勢の里戦は絶対に落としたくなかった。「(左肩の状態が思わしくなく)受け止めることができなかったけど、何とか勝たないといけない。決めていった」と腹をくくった。
もちろん、批判の声があることも承知している。それでも白鵬と日馬富士が休場して、一人横綱として責任を果たしたことで確かな手応えをつかんだ。「先輩横綱が2人いて甘えていたのかもしれない。初めて自分一人で全部背負ってみて勉強になったし、ひと回り強くなれたかもしれない」と語った。
一部には立ち合いの変化は横綱らしくないとか、正面から受けて立つべきという厳しい意見もある。それに対しては「人に認められたくて相撲を取っていない。自分の相撲人生を生きています」と答えた。初めて東の正横綱として迎える九州場所(11月8日初日、福岡国際センター)へ向けて、「今は前向きな気持ちでいる。もっと頑張らないといけない」と連覇を見据えた。