競泳男子１００メートル、２００メートル平泳ぎの元世界記録保持者で、２００４年アテネ、０８年北京五輪で２大会連続２冠に輝いた北島康介（３３）＝日本コカ・コーラ＝が１０日、東京辰巳国際水泳場で引退会見を開いた。

　指導者となることについては「僕の中で一番のコーチは平井先生なので、そこにあえて勝負しにいきたいとは思わないです」と控え目に語った。会見には旧知の人が多くいたため「昔からの人過ぎて、涙も出ないんですけど。ハハハハ」と笑って締めくくった。以下、一問一答の要旨。

　－選考会を迎えるに当たって払ってきた犠牲とは。

　「犠牲と言いましたが、犠牲ではないですね。家族との時間もそこには含まれていると思いますし、会社で働いてくれるみんなにも時間をとってあげられず、そういうところも会社の人間に感謝していますし、そういったところで言ったことで。オリンピックに行きたいからそれは当然のことで、高地トレーニングに２回も行かせてもらって。こんないい練習ができて、とてもすごい幸せでした」

　－名言を残されてきましたが、気に入っているものは。

　「名言ね！名言はですねえ。なんだろうな…。北島が言うことは本当にごく一部しか切り取られないから、その辺に対してのマスコミに対する不信感は若かりしころすごくあったんですけど（笑）。そういうところに魅力を感じてくれた皆さんにはありがたく思ってますし、オリンピックで最初に金メダルを取った時の『チョー気持ちいい』っていう言葉は、泣きたかったのを我慢して言った言葉だったので、それが流行語大賞を取れたのが自分でも不思議でしたし、流行でもなんでもないんじゃないかと思うこともありましたけど。今は自分のネタとして使わせてもらっています」

　－北島選手にとって金メダルと自己記録を出すこととの関係は。意味合いは。

　「オリンピックでの金メダルは別物でうれしいです。ただ、自己ベストは選手である以上、一生ついてくるものでありますし、そこを超えたいという気持ちで練習していると思うんですね。１番になるのはその後かなと思っていて。例えば世界記録であったりとか、誰しも記録に執着心があるのかなと思います。水泳選手は。記録出せなくて、金メダル取っても、『だめですね』とか言う選手もたくさんいるじゃないですか。『ちょっといまいちでした。泳ぎが』と。みんな自分の記録を超えていきたいスポーツなのかなと思います」

　（続けて）「（自分も）オリンピックで自己ベスト更新できなくて、自己ベストだけ更新していればもっと喜べたという気持ちにもなりました。ただ、オリンピックの金メダルとは少し違うかなと思います。違う選手がいたら聞いてみたい。『僕、自己ベスト更新しなくていいんで』っていう選手がいたら平井先生はすごく怒ると思います」

　－指導者への興味は。

　「指導者に関しては、この僕の横にいる平井先生の指導を仰いできて、コーチになりたいと思ったことはあまりないです（笑）。すごい壁が目の前にいて、平井コーチを目指して頑張っている若いコーチもたくさんいますし、やっぱり僕の中で一番のコーチは平井先生なので、そこにあえて勝負しにいきたいとは思わないですね。興味がなくはないですが、指導者にすごくなりたいとも、そんなには考えていないです。日本のスポーツ界だったり、水泳界に貢献したいという気持ちは強いので、何ができるかは分からないですけども、自分の会社でスイミングスクールで子どもたちで教える教室とかは何年もやってきているので、今は少しだけそっちに目を向けてやっていけたらいいかなと思っています」

　－オリンピックのベストオブベストと言えるレースは。

　「北京の１００じゃないですかね。予選からの流れもあって、ダーレオーエン選手がすごく強かったというのと、１００％勝てるかどうかは分からないというのがあった中で、ああいうレースができたっていうのは、金メダルを含め、記録も含め、パーフェクトな泳ぎができた会心の泳ぎができたのかなと思います」

　－水泳界もキラキラと華々しくなった。北島選手の功績だと思うが、どう考えているか。

　「僕がキラキラさせている訳ではないので何とも言えないんですが（笑）。昔は昔で良かった面もあったかなと思います。華やかと思われるのもあれかなとは思いますが、それを見て子どもたちがこんな大会出てみたいとか、注目される選手になりたいとか、強くなりたい、あんな発言したいと思ってくれる子が増えたのは事実だと思いますし、（女子自由形、バタフライの）池江さんとかはあんまり分かってないと思いますけど、萩野くんとかは『ずっと見てました』って言ってくれる世代が今度オリンピックで戦える。池江さんとかはテレビで見た人というぐらいで、年齢差がありすぎちゃうので。ただ、そういう選手たちが僕の背中を見て、強くなりたい、ああいう風になりたいと思ってもらえたことは光栄ですし、また彼らが日本の水泳界を盛り上げてほしいなと本当に心の底から思っています」

　（最後に自分から）

　「来ている人（報道陣や関係者）が昔からの人過ぎて、涙も出ないんですけど。ハハハハ」