【舩越園子の目】挑み続ける小田孔明
「全米プロ選手権・第3日」(15日、ウィスリングストレートツC=パー72)
日本のスポーツ紙の記者から小田孔明の逸話を聞かせてもらった。2年前、日本オープン3日目に首位に立ったとき、「明日は死ぬ気で勝ちに行く」と号泣。しかし翌日、勝利には届かず2位で終わったという結末。滑稽にも見えるかもしれないが、悲哀さえ感じられる小田のその逸話は、ゴルフの難しさと人生の厳しさを物語っているように感じられた。
今週は滑り込みセーフで決勝進出。先週のブリヂストン招待を終えたとき、「海外で2週連続出場は初めて。未知の世界」と言っていた。かつては海外で落胆ばかりしていた小田が、今回は2週連続で「ああ、今日もアンダーパーが出せんかった」と歯ぎしりしているのだから、彼にとっての「悔しい」の意味は確実に変わりつつあり、彼自身が「未知の世界」へ進みつつある。
3日目の18番。第2打がぎりぎりグリーンに届かず、手前のバンカーにつかまってボギーフィニッシュ。「あと2ヤード飛ばないかって感じ。気持ちは思い切って行けてるけど体力は低下してる。あんなもんしか飛んでない」。そう言って笑う小田の笑顔にはやっぱり悲哀が漂うけれど、それでも挑み続ける小田だからこそ、彼の姿に自分を重ね、「頑張れ!」と言いたくなる。(在米ゴルフジャーナリスト)