中村勘九郎、涙の口上 俳優も客席も涙
5日に亡くなった歌舞伎俳優・中村勘三郎さんの息子の中村勘九郎(31)と七之助(29)が同日、京都・南座で気丈に舞台を務め、勘九郎は自身の襲名披露公演の口上をしっかりと述べた。
勘九郎は「父が46年間、名乗り、戦い、魂こもりし勘九郎の名跡を6代目として襲名することになりました」とあいさつ。「一緒に芝居も、親孝行も、話も、飲みたい酒も、いっぱいやり残したことがあります。でも悔しいと思っているのは父。大好きな芝居ができず、お客様の笑顔が見られず、父は無念だと思う。父のことを忘れないでください」と涙ながらに客席に語りかけた。
口上に並んだ市川団十郎は「(勘三郎さんは)しめっぽいのを嫌う。最後まで明るくやりましょう」とあいさつ。片岡仁左衛門は「(勘三郎さんは)会場のどこかにいて息子の芝居を見守っていると思います」と述べた。勘三郎さんの義弟・中村橋之助は「これからも中村一門をよろしくお願いします」と語った。片岡我當は何度も涙をぬぐい、片岡秀太郎、中村時蔵、中村彌十郎、中村扇雀らは涙をこらえ切れず、肩を震わせて号泣。客席もあちらこちらですすり泣く声が聞こえた。
勘九郎と七之助はこの日午前9時過ぎにタクシーで到着。報道陣の問いかけには答えず、無言で足早に楽屋口に向かった。父の敵を討つ話がテーマの「寿曽我対面(ことぶきそがのたいめん)」で勘九郎は、父を襲ったがんの敵討ちとばかり、鬼気迫る演技で観客を圧倒した。
隈(くま)取りの化粧で花道から、ドンドンと足を踏み鳴らしながら登場した勘九郎。花道で一度、見えを切ると会場からは温かい拍手が起こった。