救命ボートの辛坊氏「東に流されてる」
太平洋横断中に小型ヨットが浸水、遭難したニュースキャスターの辛坊治郎さんと、全盲のセーラー・岩本光弘さんが21日午後、海上自衛隊に救助された。辛坊さんらの挑戦をサポートしているプロジェクトD2製作委員会が発表した。2人とも元気だという。同日午後9時ごろ厚木基地に到着する見込み。
16日に福島県いわき市の小名浜港を出港してわずか6日目。横断をサポートする事務局に、辛坊さんから緊急を知らせる電話が入ったのは21日午前7時35分だった。救助まで11時間。壮絶な交信の状況を再現する。
▼午前7時35分
辛坊さん「右舷から浸水あり、船体放棄しかない」
排水作業でも浸水が追いつかず、辛坊さんから最終手段に出るとの電話。事務局はポンプでの排水を指示し、辛坊さんから「もしかしたらポンプで(排水が)いけるかもしれない」との声。作業状況が受話器から聞こえるが、事務局の問い合わせには答えない状況が続く。
▼同8時1分(ヨットから脱出しながら電話連絡)
辛坊さん「船体を放棄しました」「イーパブ(非常用無線標識装置)は持ち出せなかった」「2人は大丈夫」
この電話連絡のおかげで、GPSから事務局に現在地報告が届く。
▼同9時50分(救命ボートに用意されていた緊急持ち出し電話・イリジウムから連絡)
辛坊さん「船体の排水はトライしたが、ダメだった」「ラフト(救命ボート)に乗り移り、東に流されている。船体放棄した」「波は2~3メートル」「2人はけがなく元気」「ペットボトルを船内から持ち出してきた」「(ラフトには)食料、水はある」
ライフラフトと呼ばれる救命ボートには、少量の食料と、ペットボトルの水数本、ライフジャケット、GPS、イリジウム電話(緊急持ち出し電話)が搭載されていた。